ニュースで「中学生の英語力が過去最高」という見出しを見かけました。
数字は出ていましたが、それが何をどう測ったものなのかは書かれていませんでした。
うちの子がその中に入るのかどうかも、記事からは分かりませんでした。
そこで、文部科学省の令和7年度「英語教育実施状況調査」の概要を開いて、本文と注記をまとめて読み直しました。
この記事に書いてあるのは、その資料に書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
中学生の英語力は、CEFR A1レベル相当以上が54.6%
資料の見出しに、数字がそのまま書かれています。
「CEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合は54.6%で増加」と書かれています。
この割合が何を母数にしているかも、注記に書かれていました。
「中学校第3学年の生徒に占める割合を算出している」と書かれています。
つまり、中学生全体ではなく、中学3年生だけを見た数字です。
年度ごとの推移も、同じページに並んでいます。
| 年度 | CEFR A1レベル相当以上の割合 |
|---|---|
| 平成25年度 | 32.2% |
| 令和5年度 | 50.0% |
| 令和6年度 | 52.4% |
| 令和7年度 | 54.6% |
10年あまりで、およそ22ポイント上がっています。
中学生の英語力の54.6%は、2つの数字を足したもの
ここが、私がいちばん驚いたところです。
この54.6%は、検定を実際に取った生徒だけの数字ではありませんでした。
グラフは2本に分かれていて、それぞれに名前が付いています。
- CEFR A1レベル相当以上を取得している生徒の割合=令和7年度は32.6%
- CEFR A1レベル相当以上の英語力を有すると思われる生徒の割合=令和7年度は22.0%
この2つを足した数が54.6%です。
「有すると思われる」のほうは、資料の言葉で定義されています。
「実際に外部検定試験の級、スコア等は取得していないが、(略)それに相当する英語力を有していると英語担当教師が判断する生徒を指す」と書かれています。
判断しているのは、その学校の英語の先生です。
中学生の英語力の判定に使われている根拠は6つ
では、先生は何を見て判断しているのか。
資料には、複数回答で集計した内訳が載っていました。
| 判断に使った根拠(複数回答可) | 令和7年度 |
|---|---|
| 2技能又は3技能を測る試験におけるスコア | 52.9% |
| CAN-DOリストに基づく自校でのパフォーマンステストの結果 | 49.6% |
| 公式な記録としては認定されない試験のスコア | 41.2% |
| その他 | 15.3% |
| MEXCBTに搭載しているCBT問題の解答状況 | 2.5% |
| AIツール等による英語力の判定結果 | 2.0% |
いちばん多いのは、4技能すべてではなく2技能か3技能を測る試験のスコアです。
2番目は、学校が自前で行うパフォーマンステストの結果でした。
AIツールによる判定は2.0%で、いちばん少ない根拠です。
この内訳を知っていると、ニュースの数字の読み方が変わります。
中学生の英語力について、国が置いている目標は6割
この調査には、達成すべき水準も書かれています。
「『第4期教育振興基本計画』(R5〜R9)では、中学校卒業段階でCEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合6割以上を目標としている」と書かれています。
令和7年度の54.6%は、この6割にまだ届いていません。
都道府県ごとの目標も、別に置かれています。
「すべての都道府県・政令指定都市において、CEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合5割以上を目標としている」と書かれています。
資料には「政府目標である(略)50%を達成した自治体は増加傾向」ともあります。
全国の平均が5割を超えていても、自治体ごとにはまだ差がある、という書き方です。
中学生の英語を教えている先生の英語力も数字が出ている
同じ調査では、教える側も測られています。
中学校の英語担当教師のうちCEFR B2レベル相当以上を取得している割合は、グラフでは平成25年度の27.9%から令和7年度の58.5%へ並んでいます。
資料には、過去の目標も注記されていました。
「『第2期教育振興基本計画』では、英検準1級程度以上(CEFR B2レベル以上)を取得した英語担当教師の割合について、中学校は50%以上、高等学校は75%以上を目標としていた」と書かれています。
さらに上のCEFR C1レベル相当以上についても、令和7年度から調査項目に加わりました。
中学校のC1レベル相当以上を取得している教師の割合は、グラフでは11.1%です。
ここでの「教師」は、外国語(英語)の免許状を持ち、かつ英語の授業を担当している人を指すと注記されています。
臨時的任用の人と非常勤講師は、この数字から除かれています。
中学生の英語力の調査は、どこまでを対象にしているか
対象と規模も、資料の冒頭に書かれています。
- 調査対象=公立中学校、特別支援学校中学部、高等学校、特別支援学校高等部(義務教育学校、中等教育学校を含む)
- 回答学校数=中学校 9,101校、特別支援学校中学部 210校
- 調査実施基準日=特に指定がない場合、令和8年2月1日
対象は公立中学校なので、私立中学校はこの数字に入っていません。
令和7年度からは、特別支援学級と特別支援学校中学部も対象に加えられました。
年度をまたいで比べるときは、対象の範囲が広がっていることも合わせて見る必要があります。
この調査は平成25年度から続いていて、令和2年度だけは新型コロナウイルスの影響により中止されたと書かれています。
中学生の英語力の次に置かれている、高校生の目標も見ておく
この調査は、中学校と高等学校を並べて載せています。
「中学校卒業段階でCEFR A1レベル相当以上、高等学校卒業段階でCEFR A2レベル相当以上」という書き方で、校種ごとに求める段が違います。
中学で1つ目の段、高校でその次の段、という並びです。
中学入学の時点では、この調査の対象になりません。
測られるのは卒業する学年、つまり中学3年生の段階です。
小学校については、この調査の対象に入っていませんでした。
資料の調査対象の欄に並んでいるのは、公立中学校、特別支援学校中学部、高等学校、特別支援学校高等部の4つだけです。
小学生の英語力を全国で数字にした資料は、この調査からは出てきません。
資料には、令和7年度の特徴として「第4期教育振興基本計画で、『負担軽減など必要な改善を行いつつ、継続したフォローアップを行う』旨決定したことを踏まえ、調査項目を精選」とも書かれています。
項目を減らしたぶん、去年まであった数字が今年は載っていないことがある、ということです。
中学生の英語力と、教師が英語を使う量の関係
資料には、要素どうしの関係の強さも載っていました。
「生徒の英語力には、英語による言語活動、教師の英語使用・英語力、ALTとの授業外活動等が影響」と書かれています。
生徒の英語による言語活動と教師の英語使用の相関係数は、中学校で0.90と書かれています。
ただし、この中学校の値は令和5年度調査の結果のため括弧で表記されている、と注記されています。
相関はすべて5%水準以下で有意だとも書かれています。
相関が強いことは、どちらがどちらの原因かを決めるものではありません。
中学生の英語力について、この記事で分からなかったこと
読んでも分からなかったことが3つあります。
- わが子がA1レベル相当に入るかどうか(判断しているのは在籍校の英語担当教師です)
- 「相当」と判断される線がどこにあるか(具体的な基準は概要に書かれていません)
- 私立中学校の生徒の状況(調査対象は公立中学校です)
この3つは今回開いた資料に答えが無かったので、分からないと書いておきます。
調査の目的は「英語教育改善の現状について調査し、今後の国の施策の検討に資する」ことだと冒頭に書かれています。
中学生の英語力について、今日わが家で決められること
ここまでで分かったことを、家の判断に置き換えます。
- ニュースの割合をそのまま自分の子に当てはめない=54.6%のうち22.0ポイントは検定を取っていない生徒
- 学校の評価の材料を知っておく=判断の根拠の2番目は自校のパフォーマンステストの結果
- 住んでいる自治体の値を見る=資料には都道府県・指定都市別のグラフがある
どれも、調査資料に出てくる言葉と数字をそのまま使って決められることです。
資料を読んだ日は2026年9月17日です。
調査は毎年更新されるので、最新の数字は文部科学省のページでご確認ください。
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