
小学校の英語の専科指導が何を指しているのかを、文部科学省の報告と調査で確かめました。
同じ学年でも学級担任が英語を教える学校と、別の教師が教えに来る学校があると聞いて、公式の資料を開いています。
開いたのは「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)」と「令和5年度公立小学校における英語教育実施状況調査」、それに教科担任制の事例集と予算資料の4つです。
この記事に書いてあるのは、その4つの資料に載っていた言葉と数字だけです。
小学校の英語の専科指導とは、学級担任ではない教師が英語を受け持つ形
結論から書くと、小学校の英語の専科指導は「学級担任以外の教師が英語の授業を担当する」仕組みです。
文部科学省の調査票には、この教師の定義がそのまま書かれていました。
「専科教師等(当該小学校所属教師)」とは、外国語教育のみを担当する教師のほか、学級担任となっていない教師で外国語教育を担当する教師をいいます、という一文です。
つまり英語だけを教える教師も、英語以外も教えるが学級担任ではない教師も、どちらも専科教師等に数えられます。
資料の中で使われている言い方は「専科指導」と「専科教師等」の2つでした。
専科指導という形そのものは、ずいぶん前から続いているものです。
事例集によれば、音楽や家庭等の技能系教科を中心とした専科指導は、昭和30、40年代から行われてきました。
平成30年度の小学校6年生について見ると、音楽は55.6%、家庭は35.7%、理科は47.8%の小学校等で教科担任制が実施されています。
英語は、その列にいちばん後から加わった教科でした。
報告では、教科担任制が指導形態で4つに分けられています。
| 分類 | 報告に書かれている中身 |
|---|---|
| 完全教科担任制 | 中学校同様に全ての教科で専科指導を行う |
| 特定教科における教科担任制 | 特定の教科について専科指導を行う |
| 学級担任間の授業交換 | 他学級の学級担任が授業を担当する |
| 学級担任とのTeam Teaching | 学級担任と組んで授業を行う |
小学校の英語の専科指導は、このうち「特定教科における教科担任制」にあたる形です。
同じ「担任以外が教える」でも、授業交換は専科指導とは別の分類で数えられています。
学校だよりで英語の担当者の名前を見かけたら、この4分類のどれなのかで役割が変わります。
小学校の英語が専科指導の優先4教科に入った理由
次に、なぜ英語が専科指導の対象になったのかを報告で確かめました。
令和3年7月に「義務教育9年間を見通した指導体制の在り方等に関する検討会議」がまとめた報告に、対象教科がはっきり書かれています。
教科指導の専門性を持った教師によるきめ細かな指導と中学校の学びに繋がる系統的な指導の充実を図る観点から、外国語、理科、算数及び体育について優先的に専科指導の対象とすべき教科とすることが適当と考えられる、という一文でした。
優先されるのは4教科で、英語はその筆頭に置かれています。
外国語が選ばれた理由も、報告の中に書き出されていました。
新たに小学校において導入された教科であり、指導体制の早急な充実が求められるとともに、中学校への学びの連続性を持たせながら、外国語によるコミュニケーション能力の基礎を培う系統的な指導を行う専門性が必要とされている、という説明です。
4つの教科が選ばれた観点を、報告の概要から並べ直しました。
| 教科 | 挙げられている観点 |
|---|---|
| 外国語 | グローバル化の進展 |
| 理科 | STEAM教育の充実・強化 |
| 算数 | STEAM教育の充実・強化 |
| 体育 | 子供の体力向上、教師の年齢構成、再任用を含む人材確保 |
共通する観点として、系統的な学びの重要性と教科指導の専門性の2つも挙げられています。
英語だけが「グローバル化の進展」という外向きの理由で並べられていました。
授業時数の増も、英語の専科指導が急がれた理由の1つです。
報告が挙げている授業時数の増は、小学校第3学年〜第6学年でそれぞれ週1コマ相当です。
この週1コマ相当が年に何時間になるのかは、小学校の英語の授業時数を省令の別表で数えた記事で数えています。↓

増えた時数を学級担任だけで抱えないための手当てが、専科指導という形でした。
小学校の英語の専科指導を担当する教師に置かれた4つの要件
英語の専科指導は、だれでも担当できるわけではありませんでした。
報告の中に「小学校英語専科指導のための加配措置における専科教員の英語力に関する要件」という参考の囲みがあります。
- ①中学校又は高等学校英語の免許状を有する者
- ②2年以上の外国語指導助手(ALT)の経験者
- ③CEFR・B2 相当以上の英語力を有する者
- ④海外大学、又は青年海外協力隊若しくは在外教育施設等で、2年以上の英語を使用した海外留学・勤務経験のある者
この4つのどれかに当てはまることが、英語力の側の条件です。
囲みには但し書きも付いていて、②〜④は、小学校教諭免許状、又は中学校英語・高等学校英語の免許状のいずれの免許状も有しない者にあっては特別免許状の授与が必要になります。
ALTの経験や留学歴だけで教壇に立つのではなく、免許の側の裏づけが別に求められる形です。
専門性を担保する方策としては、別の3つが挙げられています。
- ①当該教科の中学校又は高等学校の免許状の保有
- ②専門性向上のための免許法認定講習の受講・活用
- ③教科研究会等の活動実績
これらを組み合わせるなどして適用することが考えられる、というのが報告の書き方でした。
都道府県や市が独自に上乗せしている要件の例も、報告に載っています。
| 独自の要件の例 | 報告に挙げられている自治体 |
|---|---|
| 該当教科の中学校又は高等学校の免許状を有していること | 北海道、新潟県、奈良県、神戸市、北九州市 |
| 担当する教科に関し中学校での指導経験が5年以上であること | 報告では2つ目の例として記載 |
中学校や高校の英語の免許で小学校の教壇に立てる根拠は、法律の条文にありました。
教育職員免許法第十六条の五第1項は、中学校又は高等学校の教諭の免許状を有する者は、それぞれその免許状に係る教科に相当する教科の教授又は実習を担任する小学校の教諭や講師となることができる、と定めています。
小学校の英語という区分の免許がどうなっているかは、小学校の英語の教員免許を教育職員免許法で確かめた記事にまとめました。↓

専科指導は、この第十六条の五という通り道の上で動いている仕組みです。
小学校の英語の専科の教師は何人いるのか
人数は「令和5年度公立小学校における英語教育実施状況調査」で数えられていました。
調査基準日は令和5年12月1日で、対象は公立小学校と義務教育学校の前期課程、調査対象学校数は18,560校です。
第3学年から第6学年の英語の授業を担当する教師を延べ人数で数えると、全部で163,475人でした。
その内訳を、調査票の表から書き写します。
| 担当者の区分 | 第3・4学年 | 第5・6学年 | 計 |
|---|---|---|---|
| 学級担任 | 50,375人 | 38,064人 | 88,439人 |
| 他学級担任・他学年学級担任(授業交換) | 8,120人 | 8,397人 | 16,517人 |
| 専科教師等(当該小学校所属教師) | 16,620人 | 20,799人 | 37,419人 |
| 他小学校所属教師 | 3,568人 | 6,906人 | 10,474人 |
| 中・高等学校所属教師 | 623人 | 1,825人 | 2,448人 |
| 非常勤講師 | 3,177人 | 4,075人 | 7,252人 |
| 特別非常勤講師 | 514人 | 412人 | 926人 |
専科教師等は延べ37,419人で、担当者全体の22.9%にあたります。
学年で割ると、第3・4学年は20.0%、第5・6学年は25.8%でした。
学年が上がるほど、専科教師等の割合は上がる形です。
学級担任の側を同じように割ると、第3・4学年が60.7%、第5・6学年が47.3%になります。
第5・6学年では、英語を教える人のうち学級担任は半分を切っていました。
他小学校所属教師と中・高等学校所属教師を専科教師等に足すと、第5・6学年は29,530人で36.7%です。
学校の外から教えに来る教師も、第5・6学年のほうが多く数えられています。
この調査で小学校の数字がそろっているのは令和5年度の分で、そのことは小学校の英語教育の実施状況を調査で読んだ記事に書きました。↓

小学校の英語の専科を支える教師の免許と英語力は調査で数えられている
同じ調査には、小学校の教師の英語の免許と英語力の欄もありました。
調査対象になった小学校の教師は349,240人で、そのうち英語免許状を所有する教師は25,040人です。
割合にすると7.2%でした。
ここでいう「英語免許状」には、中学校・高等学校の臨時免許状及び特別免許状が含まれます。
英語力のほうは、別の数え方になっていました。
第3〜6学年で英語の授業を行っている教師85,847人のうち、外部試験でCEFR B2レベル相当以上を取得している教師は3,683人です。
| 項目 | 対象の人数 | 該当する人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 英語免許状の所有 | 349,240人 | 25,040人 | 7.2% |
| CEFR B2レベル相当以上 | 85,847人 | 3,683人 | 4.3% |
CEFR B2は英検準1級などに相当する水準として、調査票に書かれていました。
専科指導の要件③がこのCEFR B2相当以上なので、この3,683人という数字は要件を英語力で満たせる教師の層にあたります。
臨時的任用の者と非常勤講師は、どちらの欄からも外して数えられていました。
数字の分母と分子がそれぞれ違うので、2つの割合を足し引きはできません。
小学校の英語の専科指導を支える加配定数はどう積まれてきたか
人の数が増えるには、教職員定数という裏づけが要ります。
報告には、平成30年度以降に講じられてきた定数措置の経緯が書かれていました。
まず、小学校英語専科指導のための加配定数が、平成30年度から令和2年度の3か年で計3,000人措置されています。
次に、ティーム・ティーチングのための加配定数を発展的に見直した小学校専科指導のための加配定数が、令和2、3年度の2か年で計4,000人です。
そのうえで令和3年1月の中央教育審議会答申が、令和4年度を目途に教科担任制を本格的に導入する必要があるとしました。
事例集によれば、文部科学省は令和4年度から教科担任制の推進に必要な加配定数を措置し、4年程度をかけて段階的に取組を推進して、定数改善の総数は3,800人程度を見込んでいます。
| 資料に書かれていた定数 | 年度 | 人数 |
|---|---|---|
| 小学校英語専科指導のための加配定数 | 平成30年度〜令和2年度 | 計3,000人 |
| 小学校専科指導のための加配定数 | 令和2、3年度 | 計4,000人 |
| 教科担任制の推進に必要な加配定数 | 令和4年度から4年程度 | 3,800人程度を見込む |
| 小学校における教科担任制の拡充 | 令和7年度 | +990人 |
令和7年度予算(案)主要事項では、小学校における教科担任制の拡充として+990人が並んでいました。
内訳は、令和4年度から推進してきた高学年に加え4年生についても教科担任制を推進する分が+800人、新規採用教師の持ち授業時数軽減のための分が+190人です。
4年間で計画的に改善するとされていて、改善総数は3,960人です。
同じ資料の外国語教育の欄には、英語専科教員の加配措置(3,000人)という行もあります。
小学校英語教育の早期化・教科化に伴う専科指導に必要な教師の充実、という説明が添えられていました。
英語専科の3,000人は、教科担任制の加配とは別枠で置かれた数です。
ただし3,000人を18,560校で割ると0.16人なので、全部の学校に1人ずつ配られる規模ではありません。
住んでいる自治体によって専科の教師が来るかどうかが変わるのは、この配り方の差によるものです。
小学校の英語の専科指導で学校に起きるとされる4つの効果
国が教科担任制を進める理由は、効果の整理という形で資料に残っていました。
報告では、調査研究の結果等によるとして、効果が4つの観点に分けられています。
- ①授業の質の向上/学習内容の理解度・定着度の向上
- ②小・中学校間の円滑な接続
- ③多面的な児童理解
- ④教師の負担軽減
事例集は、この①〜④の効果を最大限発揮することが導入の目的や趣旨だとしています。
①については、アンケートの結果で「勉強が分かるようになった」という児童が93%となった小学校がある、という記述が報告にあります。
教師が担当する教科数が減り、授業外の時間が増えることで教材研究が充実する、という説明も添えられていました。
同じ授業を複数の学級で繰り返すこと自体が、授業改善につながるという整理です。
授業にはALTが入る場合もあり、その立場がどう決まっているかはALTとは何かを学習指導要領と調査で確かめた記事で整理しました。↓

③は、学級担任だけでなく複数の教師が児童を見ることで、多面的な児童理解が進むという観点でした。
事例集は、5都道県の11小学校の実践事例を載せています。
気をつけたいのは、事例集がくぎを刺している一文です。
一部の専科教員による取組とすることなく、学級担任をはじめ全ての教職員により学校全体で組織として取り組むことが不可欠だ、という一文でした。
専科教師に任せきりにしないことが、効果が出る条件として置かれています。
専科の教師・学級担任・ALTの3者で1つの授業を作る学校も、事例として並んでいました。
小学校の英語の専科指導について親が確かめること
ここまでの数字を、親の側から見る順番に並べ直します。
小学校の英語の専科で親が確かめる4つ
- ①だれが教えるかを確かめる=専科教師等は学級担任ではない教師で、第5・6学年では担当者の25.8%
- ②どの形かを確かめる=完全教科担任制・特定教科における教科担任制・授業交換・Team Teachingの4分類がある
- ③英語力の要件を知る=中高英語の免許、ALT2年以上、CEFR B2相当以上、海外2年以上の4つのどれか
- ④配られ方を知る=英語専科の加配は3,000人で、全国18,560校に1人ずつという規模ではない
学級担任が教えている学校が手を抜いているわけではなく、担当者全体の54.1%は今も学級担任でした。
資料で確かめられるのは「どの形で教えているか」までなので、我が子の学級の実際は学校の説明会や学級通信で見ることになります。
この記事で使った報告は令和3年7月、事例集は令和5年3月、調査は令和5年度の版です。
最新の内容は文部科学省の外国語教育のページと、お住まいの教育委員会の公式ページでご確認ください。
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専科の教師が担当する5・6年の英語が年に何時間あるのかは、小学校の英語の授業時数を数え直した記事にあります。↓

3・4年生の時間が5・6年生と別の扱いになっている理由は、外国語活動とは何かを施行規則で確かめた記事で分けました。↓

参考文献
- 義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について(報告)(文部科学省)
- 小学校高学年における教科担任制に関する事例集(文部科学省)
- 令和5年度公立小学校における英語教育実施状況調査(文部科学省)
- 令和5年度「英語教育実施状況調査」の結果について(文部科学省)
- 令和7年度 予算(案)主要事項(文部科学省)
- 教育職員免許法(e-Gov法令検索)
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