英語の絵本を1冊、寝る前に開いてみた日のことを覚えています。
子どもは絵をじっと見ていて、文字のほうは一度も見ませんでした。
「これ、読ませないと意味がないのかな」と思いました。
本屋で「読めるようになる」と書かれた帯を見た日は、もっと焦りました。
私は、そのもやもやを自分の感覚で決めたくなかったので、学習指導要領と幼稚園教育要領とWHOの指針、それに法律の条文を開いて読み直しました。
この記事に書いてあるのは、そこに書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
子供の英語の絵本は「読ませる」道具ではない、と公的資料から言える
先に結論を書きます。
就学前から小学校低学年のあいだ、英語の絵本を「読ませる」ことを求めている公的な文書は、私が開いた範囲では見つかりませんでした。
逆に、見つかったことははっきりしていました。
幼稚園教育要領で絵本に使われている言葉は「親しみ」「聞き」「想像をする楽しさを味わう」です。
「読ませる」でも「覚えさせる」でもありませんでした。
そして小学校の英語で「読むこと」が領域として立つのは、5年生からでした。
その5年生の「読むこと」でさえ、求められている到達点は思ったより手前にありました。
ここから先は、その一つひとつを、原文の言葉のまま並べていきます。
子供の英語の絵本を開く前に、読むことが何年生からかを確かめた
「何年生から」を知らないまま焦ると、家の時間の使い方まで狂います。
なので、まず学校の英語がいつ始まって、どの技能を扱うのかを告示から拾いました。
| 学年 | 教科等 | 年間の授業時数 | 扱う領域 |
|---|---|---|---|
| 小1・小2 | 外国語の欄なし | — | — |
| 小3・小4 | 外国語活動 | 35単位時間 | 聞くこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]の三つ |
| 小5・小6 | 外国語 | 70単位時間 | 上の三つ+読むこと+書くことの五つ |
出典=文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)(別表第一および第2章第10節)。1単位時間は45分と定められています。
告示の原文には、3・4年の外国語活動について「聞くこと,話すこと[やり取り],話すこと[発表]の三つの領域別に設定する目標」と書かれていました。
読むことと書くことは、この三つの中に入っていません。
領域として無い、ということです。
つまり小学校3年生と4年生の英語には、読むことの目標が1行も立っていません。
ここを知ったとき、私はだいぶ肩の力が抜けました。
3年生でも立っていないものを、3歳に求めていたことになるからです。
子供の英語の絵本と、国語の絵本。読むことの開始学年がこれだけ違う
同じ告示の中に、日本語の「読むこと」も書かれています。
国語科では、第1学年及び第2学年の内容にすでに「C読むこと」が立っていました。
1年生から、日本語は読みます。
英語は5年生からです。
| 言語 | 「読むこと」が領域として立つ学年 | 差 |
|---|---|---|
| 日本語(国語科) | 小学校1年生 | — |
| 英語(外国語科) | 小学校5年生 | 4学年ぶん後ろ |
出典=小学校学習指導要領(平成29年告示)(第2章第1節 国語/第2章第10節 外国語)
国が作った設計図の上では、英語を読むのは日本語を読み始めてから4年後という順番になっています。
この4年ぶんのずれを、私は家でひっくり返そうとしていました。
絵本を開くこと自体は、何歳でも止める理由がありません。
止めたほうがいいのは、開いた絵本を「読ませる時間」に変えてしまうことのほうでした。
子供の英語の絵本に関わる「読むこと」の目標は、ここまでしか求めていない
では5年生になったら、何ができればいいのでしょうか。
外国語科の「読むこと」の目標は、原文でこう書かれていました。
- ア 活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする。
- イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
出典=小学校学習指導要領(平成29年告示)(第2章第10節 外国語 第2 英語 1 目標⑵)
アは、文字を見分けて、その読み方を声に出せること。
イは、音声で十分に慣れ親しんだ語句なら意味が分かること。
「文章を読んで内容を理解する」とは、どこにも書かれていませんでした。
そして、イの前についている条件が大事だと思いました。
「音声で十分に慣れ親しんだ」が先にあって、そのあとに「意味が分かる」が来ています。
順番が決まっている、ということです。
耳が先、文字は後。これは告示の文の並びそのものです。
家で絵本を読み聞かせている時間は、この「耳が先」の側に入ります。
なので、読ませていないことは遅れではありませんでした。
子供の英語の絵本が学習指導要領に出てくるのは1か所だけ。その動詞は「識別する」
告示の全文を「絵本」で検索しました。
小学校の外国語のところで当たったのは、1か所だけでした。
外国語科の言語活動、「イ 読むこと」の(エ)です。
原文はこうです。
- (エ) 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を,絵本などの中から識別する活動。
出典=小学校学習指導要領(平成29年告示)(第2章第10節 外国語 第2 英語 2 内容 言語活動)
動詞が「読む」ではなく「識別する」でした。
しかも識別する対象は、すでに音で知っている語句に限られています。
つまり国が想定している絵本の使い方は、こうなります。
先に耳で何度も聞いて覚えた言葉が、絵本のページの中に文字として載っている。
それを「あ、これだ」と見つける。
絵本は、読解の教材ではなく「宝さがしの舞台」として書かれていました。
ちなみに3・4年の外国語活動にも、文字は出てきます。
ただし出てくる場所は「聞くこと」の中でした。
原文は「文字の読み方が発音されるのを聞いた際に,どの文字であるかが分かるようにする」です。
耳から入って文字にたどりつく形が、ここでも徹底されていました。
就学前の子供と英語の絵本。幼稚園教育要領に「英語」の文字は0件だった
次に、就学前のほうを見ました。
幼稚園教育要領(平成29年改訂)の本文を機械で検索したところ、「外国語」は0件、「英語」も0件でした。
1件も当たりませんでした。
近いのは、領域「環境」の内容の取扱いにある「異なる文化に触れる活動に親しんだり」という一文だけです。
言語の名前は出てきません。
一方で「絵本」は、領域「言葉」の中に何度も出てきました。
- ねらい⑶ 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに,絵本や物語などに親しみ,言葉に対する感覚を豊かにし,先生や友達と心を通わせる。
- 内容⑼ 絵本や物語などに親しみ,興味をもって聞き,想像をする楽しさを味わう。
- 内容の取扱い⑶ 絵本や物語などで,その内容と自分の経験とを結び付けたり,想像を巡らせたりするなど,楽しみを十分に味わうことによって…
出典=文部科学省 平成29年改訂 幼稚園教育要領(第2章 言葉)
並んでいる動詞を抜き出すと、親しむ・聞く・味わう・結び付ける・想像する、でした。
読む、は入っていません。
就学前の絵本は、日本語であっても「読ませるもの」として書かれていないということです。
それが英語なら、なおさら手前に置いていい。
私は、ここで線を引くことにしました。
⛔ ただし、これは「英語の絵本を読ませてはいけない」という意味ではありません。
子どもが自分から文字を指さして読みたがるなら、止める理由はどこにもありませんでした。
公的資料が求めていないのは「親が読ませにいくこと」のほうです。
子供の英語の絵本と、動画やアプリ。WHOが線を引いているのはここ
紙の絵本と、画面の英語コンテンツ。この2つを同じ箱に入れると判断を誤ります。
WHOが2019年に出した5歳未満向けの指針が、はっきり分けていました。
| 年齢 | 座ったままの画面時間(sedentary screen time) | 座っているときに推奨されること |
|---|---|---|
| 1歳未満 | 推奨されない(not recommended) | 養育者との読み聞かせ・語りが推奨される |
| 1歳 | 推奨されない(not recommended) | 同上 |
| 2歳 | 1時間を超えない。少ないほどよい | 同上 |
| 3〜4歳 | 1時間を超えない。少ないほどよい | 同上 |
出典=WHO|To grow up healthy, children need to sit less and play more(2019-04-24)
各年齢の項目に、同じ一文が繰り返し添えられていました。
「When sedentary, engaging in reading and storytelling with a caregiver is encouraged.」
座っているときは、養育者と一緒に読んだり物語を語ったりすることが勧められる、という意味です。
画面には上限がついていて、読み聞かせには上限がついていませんでした。
本文にも、同じ趣旨がもう一度出てきます。
「Quality sedentary time spent in interactive non-screen-based activities with a caregiver, such as reading, storytelling, singing and puzzles, is very important for child development.」
養育者との、画面を使わないやり取りのある時間――読むこと、語ること、歌うこと、パズル――が子どもの発達にとても重要だ、と書かれています。
⛔ ただし、WHOのこの指針は英語学習について述べたものではありません。
言語の種類には一言も触れていませんでした。
なので「英語の絵本なら発達にいい」とは言えません。
言えるのは、親が隣にいて声に出す形なら、時間の上限を気にする対象になっていないということまでです。
英語の動画やアプリを足すなら、上の表の時間の中に収まるかどうかを先に見る。
紙の絵本を足すなら、その計算に入れなくていい。
家の中で迷ったとき、私はこの線で分けるようにしました。
子供の英語の絵本を、法律はどう見ているか。保護者の役割が条文にある
意外だったのが、読書について日本に法律があることでした。
子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)です。
e-Gov法令検索で条文を開いて確認しました。
第2条の基本理念に、こう書かれています。
- 子ども(おおむね十八歳以下の者をいう。)の読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。
- 第6条(保護者の役割) 父母その他の保護者は、子どもの読書活動の機会の充実及び読書活動の習慣化に積極的な役割を果たすものとする。
- 第10条(子ども読書の日) 子ども読書の日は、四月二十三日とする。
出典=e-Gov法令検索 子どもの読書活動の推進に関する法律
法律が使っている言葉は「自主的に」でした。
そして保護者に求められているのは「機会の充実」と「習慣化」です。
読ませることでも、読めたかを確かめることでもありませんでした。
本が手の届くところにあること。
毎日の中にその時間があること。
親の仕事は、この2つだと条文に書いてあります。
英語の絵本に置き換えても、やることは変わりませんでした。
ただ、この法律は英語の本について特別なことは何も定めていません。
言語の区別は条文に出てきませんでした。
子供の英語の絵本を、買わずに探す。国立国会図書館サーチの使い方
「機会の充実」を、いきなり買い揃えることだと思わなくていい、と気づきました。
国立国会図書館が運営している国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)で、実際に英語の絵本を絞り込めるか試しました。
手順は4つでした。
| 順番 | やること | 画面で選ぶところ |
|---|---|---|
| 1 | NDLサーチを開く | ndlsearch.ndl.go.jp |
| 2 | キーワードを入れて検索する | 例:picture book |
| 3 | 絞り込みで「NDC」を開き、E を選ぶ | Eは絵本の分類 |
| 4 | 絞り込みで「言語」を英語にする | language=eng |
この4つをやった結果、検索結果は1,075件と表示されました(2026年9月12日に実際に開いて確認)。
検索した画面=NDLサーチ(picture book/NDC=E/言語=英語)
1件ずつのページに「全国の図書館」というリンクが付いていました。
そこから、近所の図書館がその本を持っているかを調べにいけます。
買う前に、まず借りられるかを見る順番にできる、ということです。
⛔ ここで大事な注意が1つあります。
NDLサーチは蔵書の目録であって、おすすめの本のリストではありません。
検索結果に出てきた本が、国から推薦されているわけではありませんでした。
なので、この記事では検索結果の書名を並べていません。
並べると「公的機関が勧めている本」に見えてしまうからです。
目録は、探す道具として使うのが正しい使い方でした。
子供の英語の絵本を学校で増やす道もある。国際子ども図書館のセット貸出し
調べていて、家の外にも手があることを知りました。
国立国会図書館の支部図書館である国際子ども図書館(東京都台東区)が、「学校図書館セット貸出し」という事業をやっています。
公式ページに書かれていた内容を、そのまま整理します。
- 貸し出されるのは「外国語の図書を含む児童書等約40冊」のセット
- セットの種類は「国際理解」14種類、「科学」1種類、「バリアフリー」1種類
- 利用できるのは学校図書館およびこれに準ずる施設
- ⛔ 幼稚園、保育園、こども園は対象外と明記されている
- 行きの送料は無料。返却時の送料は貸出校の負担(税の扱いは記載がないため、詳細は問い合わせが必要)
- 申込みは学期ごとで、受付期間が決まっている
これは家庭が直接使える制度ではありません。
申し込むのは学校です。
ただ、こういう制度があること自体を知らない学校もあると思いました。
懇談会などで話題に出す価値はあります。
子ども向けには、国立国会図書館キッズページも公開されていました。
これは家からでも開けます(国立国会図書館キッズページ)。
⛔ 一方で、以前あった電子展示会「絵本ギャラリー」は、開いてみたら終了の案内が出ていました。
他の記事で紹介されていても、今は見られません。
公的サービスも終わることがあるので、私は開いて確かめたものだけを書くようにしました。
子供の英語の絵本の広告を読むときに、私が見るようになった3か所
ここまで読み直してから、広告の見え方が変わりました。
見るのは3か所だけにしています。
1つめは、主語が誰かです。
「文部科学省が推奨」と書いてあるなら、その文書名とページが一緒に出ているかを見ます。
出典が無いまま公的機関の名前だけが出ているものは、そこで判断を止めます。
2つめは、到達点の書き方です。
「読めるようになる」の中身が、告示の「文字を識別して発音できる」なのか、「文章を理解できる」なのか。
この2つは、学年でいうと何年もの差があります。
3つめは、時間の置き方です。
画面を使う教材なら、WHOの1時間の目安と重ねて考えます。
他の動画やゲームの時間と合算になるからです。
紙の絵本なら、その心配はありませんでした。
この3つで、だいたいの広告は落ち着いて読めます。
子供の英語の絵本について、今日、家で決められること
最後に、今日のうちに決められることを3つだけ書きます。
どれもお金はかかりません。
- 読ませるのをやめて、読み聞かせに戻す。幼稚園教育要領の動詞は「親しみ」「聞き」「味わう」でした。指で文字を追わせる必要は、公的資料のどこにも書かれていません。
- 画面と紙を別の予算にする。WHOが上限を置いたのは画面のほうだけです。英語の動画を足すなら、他の動画の時間から引きます。
- 買う前にNDLサーチで1冊調べる。NDC=Eと言語=英語で絞り、近所の図書館の所蔵を見てから買うか決めます。
私がいちばん助かったのは、1つめでした。
読ませようとしていたときは、子どもが途中でページを閉じるたびに落ち込んでいました。
読み聞かせに戻したら、閉じられても「今日はここまでだったんだな」で終われるようになりました。
法律が書いていた「習慣化」は、たぶんこちらの状態のことだと思います。
続けられる形にしておけば、5年生で「読むこと」が始まったときに、耳の側はもう出来上がっています。
告示が求めている順番は、耳が先、文字は後でした。
家でやっていることは、その順番のとおりです。
子供の英語の絵本を調べるために開いた公的ページ
- 文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)PDF
- 文部科学省 平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)
- 文部科学省 平成29年改訂 幼稚園教育要領 PDF
- WHO|To grow up healthy, children need to sit less and play more(2019-04-24)
- WHO|Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age
- e-Gov法令検索 子どもの読書活動の推進に関する法律(平成13年法律第154号)
- 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)
- 国立国会図書館国際子ども図書館
- 国際子ども図書館 学校図書館セット貸出し 申込方法
- 国立国会図書館キッズページ
子供の英語の絵本に関する情報の確認日と免責
本記事の内容は、2026年9月12日に上記の公的ページを開いて確認したものです。
制度・事業・公開資料は変わることがあります。
最新の情報は、それぞれのページでご確認ください。
この記事は特定の絵本や教材を勧めるものではなく、公的資料に書かれていることと書かれていないことを整理したものです。
子どもの発達には個人差があります。
気になることがあるときは、園・学校の先生や、かかりつけの小児科など、お子さんを直接見ている方にご相談ください。
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