個人面談で、担任の先生に「英語を話す力がついてきました」と言われました。
うれしかったのですが、家に帰ってから、ふと分からなくなりました。
話す力って、誰が、どうやって測っているのだろう、と思ったのです。
通知表にスピーキングの点数が載っていた記憶が、私にはありませんでした。
英会話教室の体験に行けば「話せるようになります」と言われます。
でも、その「話せる」がどのくらいなのかを示す共通の物差しを、私は1つも知りませんでした。
だから、自分の感覚で決めるのをやめて、公的な資料のほうを開き直しました。
この記事に書いてあるのは、そこに書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
英語を話す力は、公的には「話すこと」1つではなく2つに分けて測られている
先に結論を書きます。
学習指導要領(平成29年告示)は、英語の目標を「五つの領域」で立てています。
聞くこと、読むこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くこと、の5つです。
5つのうち、割られているのは「話すこと」だけで、目標も別々の条文として書かれています。
| 領域 | 話す力にあたるか |
|---|---|
| 聞くこと | いいえ |
| 読むこと | いいえ |
| 話すこと[やり取り] | はい |
| 話すこと[発表] | はい |
| 書くこと | いいえ |
一方、東京都のスピーキングテストは、中学校の「話すこと」をまとめて6段階で評価しています。
英検のCAN-DOリストは、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能で書かれています。
つまり、話す力の公的な物差しは1つではなく、分け方そのものが揃っていません。
ここが、親である私がいちばん混乱していた場所でした。
小学校の英語で「話すこと[やり取り]」はこう書かれている
小学校第5学年・第6学年の外国語(英語)の目標から、そのまま引きます。
- 基本的な表現を用いて指示、依頼をしたり、それらに応じたりすることができるようにする。
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて伝え合うことができるようにする。
- 自分や相手のこと及び身の回りの物に関する事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いてその場で質問をしたり質問に答えたりして、伝え合うことができるようにする。
3つとも「伝え合う」「応じる」で終わっていて、相手がいることが前提になっています。
3つ目には「その場で質問をしたり質問に答えたりして」という条件まで入っています。
つまり[やり取り]は、用意した文を言えるかではなく、その場で返せるかを見ている領域でした。
家で単語カードを何百枚めくっても、ここは直接には育たない、ということでもあります。
小学校の英語で「話すこと[発表]」は、やり取りとは別の目標として立っている
同じ告示の、もう1つの領域です。
- 日常生活に関する身近で簡単な事柄について、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 自分のことについて、伝えようとする内容を整理した上で、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
- 身近で簡単な事柄について、伝えようとする内容を整理した上で、自分の考えや気持ちなどを、簡単な語句や基本的な表現を用いて話すことができるようにする。
こちらには「伝えようとする内容を整理した上で」という言葉が2回出てきます。
やり取りの側には、この「整理した上で」がありません。
即興で返す力と、準備して筋道立てて話す力は、告示の中で最初から別物として扱われています。
うちの子は、家族との英語のやり取りは平気なのに、人前で1人で話すとなると固まります。
その凸凹は、能力のムラではなく、別々の領域の話だったわけです。
小3・小4の英語は三つの領域だけで、読むこと・書くことは目標に入っていない
第3学年・第4学年の「外国語活動」は、領域が5つではありません。
聞くこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]の三つの領域だけです。
三つのうち二つが話す力なので、この2年間の比重は明らかに話すことに寄っています。
しかも文末が違います。
高学年は「できるようにする」、中学年は「するようにする」で書かれていて、到達を求める強さが一段ゆるいのです。
発表の項目には「人前で実物などを見せながら」という条件も付いています。
| 学年 | 教科等 | 領域の数 | 年間の授業時数 |
|---|---|---|---|
| 小3・小4 | 外国語活動 | 3領域(うち話す力が2つ) | 35単位時間 |
| 小5・小6 | 外国語 | 5領域(うち話す力が2つ) | 70単位時間 |
小学校の1単位時間は45分です。
週あたりに直すと、小3・小4は1コマ、小5・小6は2コマという計算になります。
中学校の英語になると、話す力の目標に「即興」と「社会的な話題」が入る
中学校の告示も、領域は同じ5つのままです。
変わるのは、話す力に求められる中身のほうでした。
| 領域 | 中学校の目標(抜粋) |
|---|---|
| 話すこと[やり取り] | 関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興で伝え合うことができるようにする |
| 話すこと[やり取り] | 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて、考えたことや感じたこと、その理由などを述べ合うことができるようにする |
| 話すこと[発表] | 関心のある事柄について、簡単な語句や文を用いて即興で話すことができるようにする |
| 話すこと[発表] | 日常的な話題について、事実や自分の考え、気持ちなどを整理し、まとまりのある内容を話すことができるようにする |
小学校の目標には1度も出てこなかった「即興で」が、中学校では両方の領域に入ってきます。
「社会的な話題」という言葉も、小学校の話す力の目標にはありませんでした。
中学で急に英語がつらくなる子がいるのは、話す力に求められる質がここで一段上がるからだと読めます。
東京都の英語スピーキングテストは、話す力を6段階で測っている
話す力を全員ぶん測って結果を返している公的な仕組みが、実際に1つあります。
東京都教育委員会の「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」です。
実施要項によると、正式名称は English Speaking Achievement Test for Junior High School Students です。
対象は、都内公立中学校等に在籍する第3学年の全生徒とされています。
| 項目 | 実施要項の記載 |
|---|---|
| 出題方針 | 中学校の教育課程に基づく学習の成果としての「話すこと」の力をみる |
| 出題内容 | 中学校学習指導要領(外国語)における「話すこと」に準拠した内容とする |
| 試験時間 | 準備時間を含み、前半・後半それぞれ65分程度 |
| 評価方法 | ESAT-J GRADE(6段階評価)。IRT(項目応答理論)により統計的に処理し算出 |
| 測定範囲 | CEFRのA1程度からA2程度までの範囲を測定 |
| 令和8年度の本試験日 | 令和8年11月22日(日)/追・再試験日は12月13日(日) |
タブレット端末等を使い、日曜日に会場へ集まって受ける形です。
実施要項は、目的の1つを「英語4技能育成に向けた『話すこと』の指導の充実」と書いています。
告示は5領域、テストの要項は4技能。同じ都の資料でも、言葉づかいは揃っていませんでした。
英語スピーキングテストの4つのパートは、話す力の何を見ているのか
問題は4つのパートに分かれています。
| Part | ねらい | 出題数 |
|---|---|---|
| A 音読 | 英語音声の特徴を踏まえ音読できる力をみる | 2 |
| B 会話 | 情報を読み取り、質問に応答し、質問する・考えを伝える・相手の行動を促すなど、やり取りする力をみる | 5 |
| C ナレーション | 日常の出来事について、話の流れを踏まえて状況を説明する力をみる | 1 |
| D ショートスピーチ | 自分の意見と、その意見を支える理由などを伝える力をみる | 1 |
Part Bがやり取り、Part CとDが発表にあたる並びになっています。
評価の観点は、コミュニケーションの達成度、言語使用、音声の3つです。
Part Aだけは音声の観点で、発音と強勢、読む速さや間の取り方が適切かを見ます。
採点基準を読むと、上の段には必ず「聞き手が十分に理解することができる」という言い回しが出てきます。
下の段は「聞き手にとって分かりにくい」「聞き手に内容が伝わらない」です。
つまり基準の軸は、発音の美しさではなく聞き手に伝わったかどうかに置かれていました。
英語スピーキングテストの結果は、実際にどんな分布になっているか
東京都教育委員会は、実施状況を毎年公表しています。
令和7年度は、申込者数77,903人、受験者数70,489人でした。
平均スコアは74.9で、令和6年度の68.3から上がっています。
| 段階別評価 | スコア | 令和7年度の分布 | 令和6年度 |
|---|---|---|---|
| A | 100〜80 | 47.2% | 31.3% |
| B | 79〜65 | 29.0% | 31.6% |
| C | 64〜50 | 13.4% | 22.2% |
| D | 49〜35 | 5.9% | 9.7% |
| E | 34〜1 | 4.0% | 4.6% |
| F | 0 | 0.5% | 0.5% |
この表を見て、私はAが半分近くいることに驚きました。
各段階が「英語でできること」として何を指すかも、都のページに書かれています。
| GRADE | 英語でできること(都のページの記載) |
|---|---|
| A | 身近な話題について相手と意見交換ができる。まとまりのある内容を話したり、自分の考えや理由、具体例を話したりすることができる |
| C | 相手に話しかけたり、自分のことについて質問に答えたり、自分の考えと理由を話したりすることができる |
| E | 自分のことについて質問に答えたり、話したりすることができる |
| F | 英語で話そうとしていても伝わらないことが多い |
段階の差が「理由を付けて話せるか」「相手と意見を交わせるか」で書き分けられているのが分かります。
英語スピーキングテストの結果は、都立高校入試で20点として扱われる
結果は、中学校が調査書に記載し、志願先の都立高校へ提出されます。
活用されるのは第一次募集・分割前期募集です。
| 評価 | A | B | C | D | E | F |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 都立高校で取り扱う点数 | 20点 | 16点 | 12点 | 8点 | 4点 | 0点 |
学力検査の得点と調査書点の合計1000点満点に、この点数を加えて1020点で総合得点を出します。
エンカレッジスクール、チャレンジスクール、英語の学力検査を実施しない学校は対象外と書かれています。
受けられなかった生徒については「不利にならないように取り扱います」とあり、仮の結果を算出する方法まで示されています。
話す力が、入試の点数として実際に数字になっている地域がある。ここは知っておく価値がありました。
ただし、これは東京都の仕組みです。
お住まいの自治体で同じ扱いがあるかは、その自治体の教育委員会の資料で確かめてください。
英検のCAN-DOは、英語を「話す」という1つの技能として書いている
3つ目の物差しが、英検のCAN-DOリストです。
公式ページには、目指す級の合格者が「どのようなことができる」と考えているのかが分かる、と説明されています。
| 級 | 「話す」のCAN-DO |
|---|---|
| 5級 | 日常的な話題について、自分の関心のある事柄を初歩的な語句を用いて簡単に話して伝えることができる |
| 4級 | 日常的な話題について、自身の考えや感想を初歩的な語句を用いて、まとまりのある内容で簡単に話して伝えることができる |
| 3級 | 日常的な話題について、自身の考えや感想を基本的な語句を用いて、理由を含めて話して伝えることができる |
級が上がるごとに増えるのは、語彙の難しさではなく「まとまり」と「理由」でした。
そして、ここが大事なところです。
英検のCAN-DOには「やり取り」と「発表」の区別がありません。話すは1つにまとめられています。
級を持っていることが、そのまま「その場で返せる」ことを示すわけではない、ということです。
3つの英語の物差しを並べて、いちばん大事だったズレ
ここまで見た3つを、同じ表に置いてみます。
| 物差し | 話す力の分け方 | 結果の出方 |
|---|---|---|
| 学習指導要領(平成29年告示) | やり取りと発表の2領域 | 授業と評価の目標として設定される |
| ESAT-J(東京都) | 「話すこと」でひとまとめ、4パート構成 | 6段階のGRADEとスコアで返る |
| 英検CAN-DO | 4技能のうちの「話す」1つ | 級として残る |
同じ「話す力」という言葉なのに、切り方が3つとも違います。
だから、先生が言う「話せる」と、教室が言う「話せる」と、英検の級が示す「話せる」は、同じ意味ではありません。
私が面談でもやもやしたのは、どの物差しの話なのかが分からなかったからでした。
逆に言えば、物差しの名前さえ分かれば、聞き返す一言が作れます。
子どもの英語を話す力のために、今日うちで決められること
調べ終えて、我が家で決めたのは3つだけでした。
- 「話せる」と言われたら、やり取りのことか発表のことかを聞く。面談でも体験でも、この1問で話がはっきりします。
- 家では「理由を1つ足す」だけをやる。段階の差が理由の有無で書かれていたので、そこだけ真似します。
- 住んでいる自治体の教育委員会のページを、一度だけ自分で開く。スピーキングテストがあるかないかで、中学の3年間の意味が変わります。
どれも、教材を買い足さなくても今日から始められることです。
我が家は3つ目を先にやりました。
物差しを知ってからのほうが、子どもの「今日、英語でこれ言えたよ」を正しく喜べるようになりました。
この英語の記事で使った出典
- 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』 PDF
- 文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』 PDF
- 東京都教育委員会『令和8年度 中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J YEAR 3)実施要項』 PDF
- 東京都教育委員会『令和8年度 ESAT-J YEAR 3 採点基準』 PDF
- 東京都教育委員会『令和7年度中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J YEAR 3)の実施状況について』 報道発表
- 東京都教育委員会『都立高校入試における中学校英語スピーキングテストの結果活用について』 PDF
- 東京都教育委員会『ESAT-J GRADE A/C/E/F』 特設ページ
- 公益財団法人 日本英語検定協会『英検Can-doリスト(3級・4級・5級)』 公式ページ
この英語の情報の確認日と、お願い
この記事の内容は、2026年9月12日に上記の一次資料を直接開いて確認したものです。
制度・日程・点数の扱いは変わります。受験や進路に関わる判断をする前には、必ず最新の要項をご自身で確認してください。
とくにスピーキングテストの実施日と申込期間は、年度ごとに更新されます。
この記事は特定の教材やサービスをすすめるものではなく、公的資料に何が書かれているかだけをまとめたものです。
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