子どもの英会話教室の体験に、3か所続けて行った週がありました。
どこも先生は感じがよくて、子どもはどこでも楽しそうにしていて、帰り道には毎回「ここがいいかも」と思いました。
家に帰ってパンフレットを並べると、月謝も回数もバラバラで、そもそも何と何を見比べればいいのかが分かりませんでした。
比較サイトを開いても、どのランキングも順位が違っていて、根拠が書いてありませんでした。
そこで、どの教室がいいかを他人に決めてもらうのをやめて、比べる軸のほうを自分で作ることにしました。
開いたのは、消費者庁の特定商取引法ガイドと、文部科学省の子供の学習費調査です。
この記事に書いてあるのは、その2つの公的資料に書いてあったことと、書いていなかったことだけです。特定の教室名は1つも出てきません。
子どもの英会話を比較するなら、月謝より先に「契約の形」を見ると決まる
先に結論を書きます。
英会話教室は、消費者庁が「特定継続的役務提供」として指定している7つの役務のうちの1つです。
つまり、契約の内容について事業者がやらなければならないことが、法律で決まっています。
ということは、月謝や講師の国籍のような「教室ごとに違うもの」ではなく、法律が全部の教室に同じことを要求している項目から比べれば、同じものさしで並べられます。
これが、この記事でつくる比較軸です。
- 契約前に「概要書面」が出てくるか(法律で渡すことが決まっている)
- クーリング・オフの説明が、赤枠の中に赤字で書いてあるか
- 中途解約したときの精算の書き方が、法律の上限におさまっているか
- 教材やタブレットが「関連商品」として書面に書かれているか
この4つは、体験レッスンの雰囲気とはまったく関係なく、紙を見れば誰でも同じように判定できます。
子どもの英会話教室は、消費者庁が指定した7つの役務の1つに入っている
消費者庁の特定商取引法ガイドには、こう書かれています。
「長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。現在、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つの役務が対象とされています」。
英会話は、この「語学教室」に当たります。
そして語学教室の定義には、かっこ書きで除外が付いています。
「語学の教授(入学試験に備えるため又は大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く)」。
受験対策や学校の補習として英語を教える形は、語学教室ではなく学習塾や家庭教師のほうに分類されるということです。
同じ「英語を習う」でも、看板の出し方で当てはまる欄が変わります。
なお、国や地方公共団体が行う役務の提供は、そもそも特定商取引法の適用除外だと書かれていました。
自治体が主催している子ども向けの英語教室は、民間の教室と同じ枠では比べられない、ということになります。
子どもの英会話が法律の対象になる線は「2月を超える」と「5万円を超える」
7つの役務には、それぞれ期間と金額の条件が付いています。
| 役務 | 期間 | 金額 |
|---|---|---|
| いわゆる語学教室 | 2月を超えるもの | いずれも5万円を超えるもの |
| いわゆる家庭教師 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆる学習塾 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆるパソコン教室 | 2月を超えるもの | 同上 |
| いわゆるエステティック | 1月を超えるもの | 同上 |
金額のほうには、注記が付いています。
「入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になります」。
月謝だけで判断しないということです。
入会金と教材費を足した総額で見ます。
月5,000円の教室でも、1年契約なら年6万円で、この線を超えます(計算値)。
ここに挙げた金額は、消費者庁の資料に書かれている数字をそのまま引いたものです。教室の料金表を比べるときは、表示が税込か税別かを必ず確かめてください。
もう1つ、「役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます」という注記もありました。
オンラインの子ども向け英会話も、期間と金額の条件を満たせば同じ枠に入る、と読めます。
子どもの英会話の契約前にもらう「概要書面」が、いちばん強い比較材料になる
ここが、この記事でいちばん伝えたかったところです。
消費者庁のページには「契約の締結前には、当該契約の概要を記載した書面(概要書面)を渡さなくてはなりません」と書かれています。
契約する前に、です。体験レッスンの帰りに「概要書面をください」と言える、ということです。
しかも、概要書面に書く項目まで決まっていました。
| 概要書面に書くと定められている事項 |
|---|
| 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名 |
| 役務の内容 |
| 購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量 |
| 役務の対価その他の支払わなければならない金銭の概算額 |
| 上記の金銭の支払時期、方法 |
| 役務の提供期間 |
| クーリング・オフに関する事項 |
| 中途解約に関する事項 |
| 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項 |
| 前受金の保全に関する事項 |
| 特約があるときには、その内容 |
3つの教室からこの書面をもらえば、同じ11項目が並んだ紙が3枚そろいます。
これが、比較表そのものです。
書き方についても指定がありました。
「書面をよく読むべきこと」を赤枠の中に赤字で書くこと、クーリング・オフの事項も赤枠の中に赤字で書くこと、字と数字の大きさは8ポイント以上であること、と決まっています。
赤枠と赤字があるかどうかは、英語の知識がなくても目で分かります。
子どもの英会話のクーリング・オフは、書面を受け取った日から8日以内
クーリング・オフの条文も読みました。
「法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、書面又は電磁的記録により契約(関連商品の販売契約を含む)の解除をすることができます」。
起算日は「契約した日」ではなく「書面を受け取った日」でした。
解除したときにどうなるかも書かれています。
- 役務がすでに提供されていても、その対価を支払う必要はない
- 損害賠償や違約金を支払う必要はない
- すでに頭金などを払っていれば、速やかに返してもらえる
- 受け取った商品は、販売業者の負担で引き取ってもらえる
さらに、事業者が事実と違うことを告げたり威迫したりしてクーリング・オフをしなかった場合は、8日を過ぎていてもできる、とも書かれていました。
証拠の残し方についても、消費者庁は具体的に書いています。
書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便、メールなら送信したメールの保存、専用フォームならスクリーンショット、という書き方でした。
子どもの英会話を途中でやめるときの上限額は、政令で決まっている
8日を過ぎたあとの中途解約についても、条文があります。
「消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます」。
そのうえで、事業者が請求できる額に上限が置かれていました。
| いつやめるか | 語学教室の上限 | 学習塾の上限 |
|---|---|---|
| レッスンが始まる前 | 1万5000円 | 1万1000円 |
| レッスンが始まったあと | 提供済みの対価+「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」 | 提供済みの対価+「2万円または1か月分の授業料相当額のいずれか低い額」 |
同じ「英語の習い事」でも、語学教室と学習塾で上限額が違うところが、読んでいていちばん驚いた点でした。
「契約残額」の定義も書かれています。
「契約に関する役務の対価の総額から、既に提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額」です。
そして、上限を超える額をすでに受け取っている場合には、残額を返還しなければならない、と明記されていました。
子どもの英会話で買った教材も「関連商品」として一緒に解約できる
入会のときに、教材一式をすすめられることがあります。
この教材の扱いも、消費者庁のページに書かれていました。
「消費者が本体の特定継続的役務提供等契約をクーリング・オフ(又は中途解約)した場合には、その関連商品についてもクーリング・オフ(又は中途解約)することができます」。
そして、語学教室の関連商品として指定されているものが列挙されています。
- 書籍(教材を含む)
- カセット・テープ、CD、CD-ROM、DVDなど
- ファクシミリ機器、テレビ電話
教材が「関連商品」として書面に書かれているかどうかは、そのまま比較項目になります。
書かれていなければ、レッスンをやめても教材代だけが残る可能性があります。
もう1つ、前払いの話もありました。
前払方式で5万円を超える契約をする事業者には、貸借対照表や損益計算書などを用意し、消費者の求めに応じて閲覧できるようにしておく義務があります。
一括前払いをすすめられたときに、この閲覧を求められるかどうかも軸になります。
子どもの英会話の広告と勧誘には、禁止されている行為が決まっている
比較の材料になるのは、書面だけではありませんでした。
誇大広告等の禁止として、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」が禁止されています。
上達を言い切る形の表現が広告に出ているかどうかは、そのまま確認の材料になります。
勧誘についても3つの禁止行為が挙げられていました。
- 契約の締結の勧誘の際、又は契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げること
- 契約の締結の勧誘の際、故意に事実を告げないこと
- 契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
そして、事実と違うことを告げられて誤認したまま契約した場合は、その意思表示を取り消すことができる、とも書かれています。
その場で契約させようとする空気をつくられたときに、この条文を知っているかどうかは大きいと思いました。
子どもの習い事にいくら使われているかは、文部科学省の調査で目盛りが取れる
金額が高いか安いかは、教室のパンフレットだけを見ていても分かりません。
そこで、文部科学省の令和5年度子供の学習費調査を開きました。
この調査の区分表で、外国語会話は「その他の学校外活動費」の中の「教養・その他」に入ることが確認できました。
定義の欄には「習字、そろばん、外国語会話などを習うために支出した経費」と書かれています。
| 区分(1年間・子供一人当たり) | 公立小学校 | 私立小学校 |
|---|---|---|
| 学習費総額 | 366,599円 | 1,741,516円 |
| うち学校外活動費 | 256,489円 | 709,667円 |
| その他の学校外活動費のうち「教養・その他」 | 36,111円 | 96,198円 |
| 同「スポーツ・レクリエーション活動」 | 66,529円 | 101,233円 |
公立小学校の「教養・その他」は年36,111円なので、12で割ると月3,009円です(計算値)。
この区分には習字もそろばんも一般図書も入っているので、英会話だけの金額ではありません。
それでも、「習い事全般に年3万円台」という目盛りを知ったうえで月謝を見るのと、何も知らずに見るのとでは、判断が変わります。
なお、この調査の金額に税込か税抜かの区別は書かれていません。保護者が実際に支出した額を集計したものなので、支払った金額そのものとして読みました。
子どもの英会話を並べて比べるためのチェックリスト
ここまでを、1枚にまとめます。
| 確かめる項目 | どこを見るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約前に概要書面が出てくるか | 体験のあとに請求してみる | 特定商取引法 第42条 |
| 契約期間は2月を超えるか | 概要書面の「役務の提供期間」 | 指定役務の条件 |
| 入会金・教材費を含む総額はいくらか | 概要書面の「概算額」 | 総額5万円超で法の対象 |
| クーリング・オフの記載が赤枠赤字か | 書面の見た目 | 書面交付の義務 |
| 中途解約の精算が上限内か | 概要書面の「中途解約に関する事項」 | 語学教室=開始前1万5000円ほか |
| 教材が関連商品として書かれているか | 「購入が必要な商品」の欄 | 関連商品の指定 |
| 前払いなら財務書類を見せてもらえるか | 申し出てみる | 書類の閲覧の義務 |
| 広告に言い切りの表現がないか | チラシ・サイト | 誇大広告等の禁止 |
この8項目は、英語がどれだけ身につくかとは関係がありません。
ただ、8項目すべてが気持ちよく通る教室と、聞くと空気が悪くなる教室があるとしたら、その差は判断材料になります。
レッスンの中身を素人が比べるのは難しくても、書面の扱いなら親でも比べられる、というのがこの記事の考え方です。
子どもの英会話について、公的資料に書いていなかったこと
書いてあったことだけでなく、書いていなかったことも残します。
文部科学省の令和5年度子供の学習費調査の資料を機械で検索したところ、「英会話」「英語」という語は、区分の定義にある「外国語会話」の1か所を除いて出てきませんでした。
つまり、この調査から「子どもの英会話の平均月謝」を取り出すことはできません。
消費者庁のページにも、適正な料金水準や、良い教室の見分け方は書かれていませんでした。
公的資料が決めてくれるのは「手続きが守られているか」までで、「どこに通わせるか」は決めてくれません。
最後は親が決めることになりますが、決める前にふるいにかける道具は、法律のほうが用意してくれていました。
子どもの英会話の比較で、今日、家で決められること
今日のうちにできることを3つだけ書きます。
- 候補の教室に「概要書面をください」と伝える。契約前に渡すことが法律で決まっているので、遠慮する必要がない
- 上の8項目のチェックリストを紙に書き写して、教室ごとに丸を付ける。月謝の欄は最後に見る
- 入会金と教材費を足した総額を計算して、5万円を超えるかどうかを確かめる。超えていれば、この記事の条文がまるごと使える
この3つは、どれも消費者庁と文部科学省の資料に書いてあったことだけを根拠にしています。
割り算をした数字には、本文中に「計算値」と書き添えました。
法律や政令は改正されることがあるので、契約の前には消費者庁のページで最新の記載をご確認ください。
実際に契約でこまったときは、お住まいの地域の消費生活センターなど、公的な相談窓口にご相談ください。
この記事は特定の教室をすすめたり、すすめなかったりするものではなく、公的資料に書かれている手続きを整理したものです。
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