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親子の英会話は何をやればいい? 教育基本法・学習指導要領・WHO・学習費調査を読んで決めた家の10分

夜、下の子を寝かせたあとに、上の子と2人でリビングに残る時間が15分だけあります。

その15分で英語の絵本を読もうとして、発音が合っているのか分からなくなって、途中でやめたことがあります。

親子で英会話をやったほうがいいのは何となく分かるのに、何を、どのくらい、いつまでやればいいのかが、どこにも書いていませんでした。

検索して出てきたのは「親の英語力は関係ない」と「親の英語力は影響する」が半々で、どちらにも根拠が付いていませんでした。

それで、他人の感想を読むのをやめて、公的な資料のほうを自分で開くことにしました。

開いたのは、文部科学省の学習指導要領と幼稚園教育要領、令和5年度の子供の学習費調査、WHOの指針、消費者庁の特定商取引法ガイド、そして教育基本法の条文です。

この記事に書いてあるのは、その資料に書いてあったことと、機械で数えて「書いていなかった」と確かめられたことだけです。教材名もサービス名も1つも出てきません。

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親子の英会話で先に決まるのは、教える中身ではなく「一緒にいる時間の形」だった

先に結論を書きます。

公的資料をひととおり読むと、保護者に求められている役割として書かれているのは「教えること」ではなく、習慣・生活・一緒に過ごす時間のほうでした。

教育基本法も、幼稚園教育要領も、学習指導要領も、保護者に英語を教えさせる書き方をしていません。

かわりに書いてあるのは、学習習慣、生活習慣、自立心、そして保護者と子どもが一緒に活動する機会です。

つまり、親子の英会話でまず決めるのは教材ではなく、「どの時間帯に、何分、どんな形で一緒にいるか」という枠のほうになります。

  • 親が発音の先生になる必要があると書いた公的資料は、この記事で読んだ範囲では見つかりませんでした
  • かわりに、学習習慣の確立について「家庭との連携を図りながら」配慮すると学習指導要領に書いてあります
  • 幼稚園教育要領には「保護者と幼児との活動の機会」という語がそのまま入っています

役割を「先生」から「時間の管理人」に置き換えると、親子の英会話でやることはかなり減ります。

以下、その根拠を1つずつ資料から拾っていきます。

親子の英語で、法律が保護者に求めているのは「習慣」と「自立心」だけだった

まず、いちばん上の決まりから見ます。

教育基本法の第十条は「家庭教育」という見出しが付いた条文です。

条文には「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」と書かれています。

ここに出てくるのは、習慣、自立心、心身の調和の3つだけです。

特定の教科の話は出てきません。

英語も、算数も、条文の言葉としては一度も登場しません。

この条文は、e-Gov法令検索の教育基本法で法令データを取得して本文を確認しました。

親子の英会話を「親の責任」として重く受け止める前に、法律が書いている責任の中身がここまでだということは、知っておいて損がないと思いました。

親子で英語をやるかどうかは、法律で決められた義務の外側にある選択です。

親子で補う前に、学校の英語が年に何時間あるかを親子で数えておく

家でどのくらいやるかを決めるには、学校でどのくらいやっているかが分からないと決められません。

小学校学習指導要領(平成29年告示)の別表第一に、学年ごとの授業時数が載っています。

外国語活動は小学3年と小学4年でそれぞれ年間35単位時間、外国語は小学5年と小学6年でそれぞれ年間70単位時間です。

同じ表の注に「この表の授業時数の一単位時間は、四十五分とする」と書かれています。

45分で計算すると、次のようになります。

学年科目名年間の単位時間45分換算の年間時間週あたりのめやす
小学1年・小学2年(外国語の時数の定めなし)———
小学3年・小学4年外国語活動35単位時間約26時間週1コマ
小学5年・小学6年外国語70単位時間約53時間週2コマ

小学3年から小学6年までの4年間を足しても、45分換算で約158時間にしかなりません。

4年間で158時間ということは、1年あたり約40時間です。

この数字を見てから、家で1日10分だけやると仮定して計算し直してみました。

1日10分を週5日つづけると、年間で約43時間になり、学校の年間の英語の時間とほぼ同じ量になります。

この計算は単純な掛け算で、学習の効果を保証するものではありません。

それでも「家の10分はゼロではない」という目盛りにはなりました。

親子の家と同じで、小学校の外国語活動も担任の先生が受け持つ決まりだった

親の英語力が気になるなら、学校で誰が教えているのかを見ておくと落ち着きます。

小学校学習指導要領の第4章「外国語活動」の指導計画の作成に関する配慮事項には、こう書かれています。

「学級担任の教師又は外国語活動を担当する教師が指導計画を作成し、授業を実施するに当たっては、ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材などの協力を得る等、指導体制の充実を図る」

つまり、原則として授業を組み立てるのは学級担任です。

そのうえで、ネイティブ・スピーカーや地域の人材の協力を得る、という順番で書かれています。

英語の専門家ではない大人が中心にいて、専門家が協力に入る、という形が公的資料に書かれている形でした。

家庭も、構図としてはこれと同じ形が取れます。

親が時間と場を組み立てて、音声や発音の部分は音源や動画に任せる、という分け方です。

親子の英会話で、親が発音の見本になる必要はない、と読み替えることができます。

また、外国語活動の目標そのものも、学習指導要領では「コミュニケーションを図る素地となる資質・能力」を育成することとされています。

素地という言葉が使われている以上、この段階で流暢さを求める設計にはなっていません。

親子で通う幼稚園の教育課程に英語が無いことは、全文を数えて確かめた

未就園・就園の時期に親子で英語をやるかどうかは、幼稚園がどう扱っているかで見え方が変わります。

そこで、幼稚園教育要領(平成29年告示)の全文をテキストにして、語を機械で数えました。

数えた語幼稚園教育要領(平成29年告示)全文での出現回数
英語0回
外国語0回
国際理解0回

3語とも0回でした。つまり、幼稚園の教育課程に英語は位置づけられていません。

これは「たぶん載っていない」ではなく、全文を機械で検索して0件だった結果です。

幼稚園で英語の時間があるかどうかは、園ごとの取り組みであって、国の基準に書かれた内容ではない、ということになります。

園のパンフレットに英語があっても無くても、教育要領に照らして優劣が付く話ではありませんでした。

親子で英語を始める時期を決めるときに、この1点は判断材料になりました。

始めるのが早くても遅くても、国の基準から外れることにはならないからです。

幼稚園教育要領には「保護者と幼児との活動の機会」という親子の条文があった

英語は0回でしたが、親子については、はっきり書かれている箇所があります。

幼稚園教育要領の第3章にあたる部分に、家庭との連携についての記述があります。

「家庭との連携に当たっては、保護者との情報交換の機会を設けたり、保護者と幼児との活動の機会を設けたりなどすることを通じて、保護者の幼児期の教育に関する理解が深まるよう配慮するものとする」

同じ箇所の直前には「幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会を通じて次第に広がりをもつものである」とも書かれています。

英語という語は0回なのに、保護者と子どもが一緒に活動することは、条文として書かれている。

公的資料が重く見ているのは、科目より先に、親子で過ごす場そのもののほうでした。

小学校学習指導要領の総則にも、似た向きの文があります。

「児童の言語活動など、学習の基盤をつくる活動を充実するとともに、家庭との連携を図りながら、児童の学習習慣が確立するよう配慮すること」

ここでも家庭に期待されているのは、教える内容ではなく学習習慣の側です。

親子で画面を見る時間には、WHOが年齢ごとの数字を置いている

親子英会話の実務でいちばん迷うのが、動画やアプリをどこまで使っていいのかという線引きです。

ここには、WHOが2019年に出した5歳未満向けの指針に数字があります。

年齢座ったままの画面時間(sedentary screen time)座っているときに推奨されること
1歳未満推奨されない(screen time is not recommended)保護者と一緒の読み聞かせ・語りかけ
1歳推奨されない(not recommended)保護者と一緒の読み聞かせ・語りかけ
2歳1時間を超えないこと。少ないほどよい保護者と一緒の読み聞かせ・語りかけ
3歳・4歳1時間を超えないこと。少ないほどよい保護者と一緒の読み聞かせ・語りかけ

1歳未満と1歳は「推奨されない」、2歳から4歳は「1時間を超えない、少ないほどよい」という並びです。

この数字は英語の動画かどうかを区別していません。

英語だからよい、教育目的だからよい、という例外はWHOの文面には書かれていませんでした。

つまり、親子英会話のために動画を足すなら、その分はほかの画面時間から引くことになります。

なお、この指針の対象は5歳未満です。

小学生については、この文書には数字がありません。

WHOが親子にすすめているのは、画面ではなく読み聞かせと語りだった

同じWHOの発表には、画面の制限とセットで、推奨されている過ごし方が書かれています。

「保護者と一緒に行う、画面を使わない双方向の活動(読書、語り、歌、パズルなど)で静かに過ごす時間は、子どもの発達にとって非常に重要である」という趣旨の記述があります。

原文では reading、storytelling、singing、puzzles の4つが例として挙がっています。

この4つは、そのまま親子英会話の形に置き換えられます。

  • reading = 英語の絵本を読む(親の発音が完璧である必要は、この文面からは読み取れません)
  • storytelling = 同じ絵本の内容を、日本語まじりで話し直す
  • singing = 英語の歌をかける。親は歌詞を覚えなくても一緒に口を動かせます
  • puzzles = 単語カードや絵合わせのように、手を動かす遊びにする

WHOが「非常に重要」と書いているのは、内容の高度さではなく、保護者と一緒である(with a caregiver)という点のほうです。

そして、同じ発表の中で睡眠の時間も年齢ごとに示されています。

1歳から2歳は昼寝を含めて11〜14時間、3歳から4歳は昼寝を含めて10〜13時間の良質な睡眠が推奨されています。

夜の英語タイムを足すときに、この睡眠時間を削らないかどうかは、先に確かめておきたい数字でした。

出典はWHOの2019年4月24日の発表です。

親子の英語に家庭がいくら払っているかは、文部科学省の調査に金額が載っている

お金の目盛りも取っておきます。

文部科学省の令和5年度子供の学習費調査には、学校外活動費の内訳が細かく載っています。

この調査の用語解説を読むと、英会話がどこに分類されるかが書いてありました。

「教養・その他」の定義に「習字、そろばん、外国語会話などを習うために支出した経費」と明記されています。

つまり、英会話教室の月謝は「その他の学校外活動費」の中の「教養・その他」に入ります。

あわせて、家庭の中で使う教材の費用は「家庭内学習費」として別に集計されています。

こちらの定義は「家庭の中での学習に使用する物品・図書の購入費」です。

親子英会話で買う絵本やカードは、この「家庭内学習費」に当たります。

区分(年額・1人あたりの平均)公立幼稚園公立小学校私立小学校
家庭内学習費8,894円13,361円42,251円
教養・その他(外国語会話を含む区分)22,092円36,111円96,198円

公立小学校では、家庭の中の教材費が年に13,361円、英会話を含む「教養・その他」が年に36,111円でした。

学年別に見ると、公立小学校の家庭内学習費は第1学年が31,032円でいちばん高く、第2学年以降は1万円前後に下がっています。

入学のタイミングで教材にお金が動いて、その後は落ち着く形です。

この金額は「かけるべき額」ではなく、実際に支出された額の平均です。

なお、この調査の資料を機械で検索すると「税込み」という語が出てくるのは世帯年収の定義の1か所だけで、学習費の金額そのものには税込・税抜の断りがありません。

保護者が実際に支出した経費を集計したものなので、ここでは支払った総額として読んでいます。

元データは文部科学省の子供の学習費調査です。

親子で教室に通うときの契約は、消費者庁が定めたルールで読む

家だけで続かなくて教室を検討するときに、1点だけ知っておくと違う条文があります。

消費者庁の特定商取引法ガイドによると、語学教室は「特定継続的役務提供」として指定された7つの役務の1つです。

語学教室は「期間が2月を超える」かつ「金額が5万円を超える」ものが法律の対象になります。

この2つの線を両方またいだ契約は、次のルールが事業者に課されます。

  • 契約の締結前に、契約の概要を記載した「概要書面」を渡すこと
  • 法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内は、書面または電磁的記録でクーリング・オフができること
  • クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって中途解約ができること

中途解約のときに事業者が請求できる額にも上限が決まっています。

語学教室の場合、役務の提供開始前は1万5000円、提供開始後は「5万円または契約残額の20%のいずれか低い額」に、提供済みの対価を足した額が上限です。

さらに、語学教室で買った書籍や教材、CDやDVDなどは「関連商品」として指定されていて、本体の契約を解約すれば一緒に解約できます。

親子で通うレッスンでも、契約が上の2つの線をまたぐなら、同じルールが働きます。

見学に行く前に「概要書面をください」と言えるかどうかだけで、比べ方がかなり変わりました。

条文の一覧は消費者庁の特定継続的役務提供のページにまとまっています。

親子の英会話について、公的資料に書いていなかったこと

読んだ範囲で、はっきり書いていなかったことも並べておきます。

書いていないことを「たぶんこうだろう」で埋めないために、そのまま書きます。

よく見かける問い今回読んだ公的資料の状態
親子英会話は何歳から始めるのがよいか開始年齢を示した記述は見つかりませんでした
1日何分やればよいか家庭学習の時間を数字で示した記述は見つかりませんでした
親の発音は子どもに影響するか影響の有無を判断できる記述は見つかりませんでした
英語の動画は学習だから画面時間の例外かWHOの発表に例外の記述はありません
幼稚園で英語をやるべきか幼稚園教育要領に英語という語は0回です

開始年齢と1日の時間は、公的資料の側が答えを持っていませんでした。

ここは各家庭が決める部分です。

答えが無いところを、誰かのランキングで埋めないようにしています。

親子の英会話で、今日、家で決められること

最後に、資料を読んだあとに我が家で実際に決めたことを3つ書きます。

1|親子の時間を「何分」で決める。内容はあとで決める

学校の英語は45分換算で年40時間前後でした。

1日10分を週5日で年43時間になるので、まず10分という枠だけをカレンダーに置きました。

何をやるかは、枠が続いてから決めれば間に合います。

2|親子で使う画面の時間を、年齢の数字に合わせる

5歳未満なら、WHOの数字がそのまま線になります。

2歳から4歳は1日1時間まで、1歳以下は推奨されない、という線を家族で共有しました。

英語の動画を足すなら、その分はほかの動画から引く、という運用にしています。

3|親子で払っているお金を、年額で1回だけ書き出す

月謝と教材費は、月で見ると小さく見えます。

公立小学校の平均は家庭内学習費が年13,361円、英会話を含む「教養・その他」が年36,111円でした。

自分の家がこの平均のどのあたりにいるのかを、年額で1回書き出すだけで判断が変わりました。

親子の英会話は、教える力ではなく、続けられる枠をどう作るかの話だと考えています。

公的資料が保護者に求めているのは、先生になることではなく、習慣と時間を用意することでした。

親子の英会話を考えるときに読んだ出典

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