子どもの英語を調べていると、フォニックスという言葉に必ずぶつかります。
教材の説明にも、英会話教室の案内にも、だいたい書いてあります。
それ自体は知っているのですが、私が分からなかったのは「これは学校でやることなのか、家で足すことなのか」でした。
学校がやってくれるなら家でお金と時間を使う必要はないし、学校がやらないなら家で足すかどうかを自分で決めないといけません。
そこで、国が学校に何を求めているのかが書いてある資料を開いて、この言葉を探すことにしました。
開いたのは、文部科学省が公開している小学校学習指導要領と中学校学習指導要領の告示本文です。
この記事に書いてあるのは、その告示本文に書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
フォニックスという言葉は、小学校学習指導要領の告示本文に1件も出てこない
先に結論を書きます。
小学校学習指導要領(平成29年告示)と中学校学習指導要領(平成29年告示)の告示本文PDFを全文テキスト化し、空白を詰めてから数えたところ、「フォニックス」は両方とも0件でした。
数えた日は2026年9月16日です。
ついでに、まぎらわしい語も同じやり方で数えました。
| 数えた語 | 小学校学習指導要領(平成29年告示) | 中学校学習指導要領(平成29年告示) |
|---|---|---|
| フォニックス | 0件 | 0件 |
| アルファベット | 0件 | 0件 |
| つづり | 0件 | 0件 |
| ローマ字 | 3件 | 0件 |
| 音声 | 20件 | 7件 |
| 文字 | 35件 | 33件 |
| 発音 | 11件 | 7件 |
つまり、国が学校に求めていることの中に「フォニックス」という言葉そのものは入っていません。
これは「フォニックスはよくない」という意味ではありません。
国が指導法の名前を指定していない、というだけのことです。
名前が無いということは、やるかどうかも、どこでやるかも、学校や家庭の側が決めているということになります。
フォニックスの代わりに告示本文が使っているのは「音声」と「文字及び符号」という言い方
では、国は何と書いているのか。
小学校の外国語(第5学年および第6学年)の内容には、こう並んでいます。
- ア 音声=(ア)現代の標準的な発音(イ)語と語の連結による音の変化(ウ)語や句,文における基本的な強勢(エ)文における基本的なイントネーション(オ)文における基本的な区切り
- イ 文字及び符号=(ア)活字体の大文字,小文字(イ)終止符や疑問符,コンマなどの基本的な符号
音と文字が、別々の項目として並んでいるのが分かります。
フォニックスは一般に「文字と音の対応を教えるやり方」として説明されます。
ところが告示本文では、音声の中身は強勢やイントネーションや区切りで、文字の中身は活字体の大文字・小文字と符号でした。
文字と音をつなぐ規則そのものを扱う項目は、この並びの中には置かれていません。
ここが、私がいちばん意外だったところです。
フォニックスが関わる「書くこと」は、小学校では第5学年から始まる
小学校の外国語は、第3学年と第4学年が外国語活動、第5学年と第6学年が外国語(教科)です。
この2つは、目標の数からして違います。
| 第3学年・第4学年(外国語活動) | 第5学年・第6学年(外国語) | |
|---|---|---|
| 領域 | 聞くこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]の3領域 | 聞くこと/読むこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くことの5領域 |
| 育てるもの | コミュニケーションを図る素地となる資質・能力 | コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力 |
| 授業時数 | 年35単位時間 | 年70単位時間 |
文字を「読む」「書く」が目標に入るのは、第5学年からです。
第3学年と第4学年は、聞くことと話すことの3領域だけで組まれています。
そして第5学年の言語活動には「活字体の大文字,小文字を書く活動」と書かれています。
国の設計では、アルファベットを書く作業は10歳前後から始まる、ということです。
フォニックスで扱う語と、小学校で扱う600〜700語程度の語の関係
小学校の外国語で扱う語数も、告示本文に数字で書いてあります。
「第3学年及び第4学年において第4章外国語活動を履修する際に取り扱った語を含む600〜700語程度の語」と書かれています。
中学校の側は「小学校で学習した語に1600〜1800語程度の新語を加えた語」です。
この2つを足すと、義務教育を終えるまでに触れる語は2,200〜2,500語程度という計算になります。
フォニックスは本来、初めて見る単語を自分で読むための道具として説明されるものです。
扱う語の数が決まっているなら、その道具がどれだけ効くかも、扱う語の範囲の中で考えることになります。
ここは資料に書いていないので、私には判断できません。
フォニックスを扱う先生の数は、告示本文からは分からない
もうひとつ数えた語があります。
「外国語指導助手」も「ALT」も、小学校・中学校の告示本文では0件でした。
一方で、外国語活動の指導計画に関する配慮事項には「学級担任の教師又は外国語を担当する教師が」という書き方が出てきます。
誰が教えるかは、告示本文では学校側の体制の話として書かれていて、人数や資格の数字は入っていません。
つまり「うちの学校でフォニックスをやっているか」は、告示本文をいくら読んでも分かりません。
そこは学校に聞く話になります。
フォニックスが目指す「自分で読む」は、小学校の目標ではどこまで求められているか
小学校の外国語には、読むことの目標が2つだけ書かれています。
- ア 活字体で書かれた文字を識別し,その読み方を発音することができるようにする。
- イ 音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現の意味が分かるようにする。
「音声で十分に慣れ親しんだ」という条件が、わざわざ先に置かれています。
初めて見る単語を文字から読み解く、という書き方にはなっていません。
書くことの目標も同じ形です。
「音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を書き写すことができるようにする」と書かれています。
書き写す、が目標の言葉です。
つまり小学校の段階では、音が先にあって、文字はそのあとに来る順番で組まれています。
フォニックスを家で足すとしても、この順番を逆にする必要はない、と私は読みました。
フォニックスとローマ字は別物だが、告示本文ではローマ字のほうが先に出てくる
さきほどの表で、ローマ字だけが小学校で3件だったのを見ました。
ローマ字は外国語ではなく、国語科に置かれている内容です。
日本語の音をアルファベットで書く練習と、英語の文字と音の対応は、別の話になります。
ただ、子どもの側から見ると、アルファベットに最初に出会う場所は国語の時間だということになります。
家で英語の文字を扱うときに、ここで混乱が起きることはあり得ます。
これも資料に書いてある事実で、どう扱うべきかまでは書かれていません。
フォニックスの前に、学校で英語に触れる時間が何分あるのかを数える
小学校学習指導要領の別表第一には、授業時数が単位時間で書かれています。
1単位時間は45分です。
| 学年 | 教科等 | 年間の授業時数 | 45分換算の合計 |
|---|---|---|---|
| 第3学年・第4学年 | 外国語活動 | 35単位時間 | 1,575分(約26時間) |
| 第5学年・第6学年 | 外国語 | 70単位時間 | 3,150分(約52時間) |
4年間の合計は、1学年ずつ足すと約157時間になります。
学校で英語に触れる時間の総量が、この数字です。
家で足す時間を決めるときは、この総量と比べると判断しやすくなりました。
たとえば1日10分を1年続けると約60時間で、学校の外国語1年ぶんより多くなります。
フォニックスを家で足すかどうかを決める、3つの材料
ここまでで分かったことを、判断に使える形に並べ直します。
- ①国はフォニックスという指導法を名前で指定していない=学校でやる保証も、やらない保証も無い
- ②文字を書く活動が始まるのは第5学年=それより前は聞くことと話すことが中心
- ③小学校で扱う語は600〜700語程度=扱う範囲は決まっている
この3つは、どれも告示本文に書いてある言葉と数字です。
逆に、告示本文に書いていないことを3つ挙げます。
- フォニックスを何歳から始めると良いか
- フォニックスと他の教え方のどちらが効くか
- 家庭でフォニックスをやるべきかどうか
この3つは、私が開いた資料には1行も書かれていませんでした。
フォニックスについて、この記事で分からなかったこと
「フォニックス0件」は、あくまで告示本文の話です。
学習指導要領には、告示本文とは別に「解説」という冊子があります。
今回数えたのは告示本文のPDFだけなので、解説の側にどう書かれているかは、この記事では確かめていません。
また、教科書の中身や、実際の授業でどう扱われているかも数えていません。
分からないことは、分からないと書いておきます。
フォニックスをめぐって、今日、家で決められること
資料を読み終えて、私が家でやると決めたのは3つです。
- 学校の外国語が第3・4学年は年35単位時間、第5・6学年は年70単位時間だと知ったうえで、家で足す時間の量を決める
- 第5学年より前の子には、文字を書かせることより、聞くことと話すことを先に置く
- 英語教室の案内に「フォニックス」と書いてあったら、それが学習指導要領の言葉ではないことを前提に、中身を聞く
どれも、告示本文に書いてある言葉と数字だけを根拠にしています。
「0件」と書いたものは、PDFを全文テキストにして空白を詰めてから数えた結果です。
この記事は特定の学習方法の効果を保証するものではなく、公開されている資料に書いてあることと書いていないことを整理したものです。
お子さんの英語の進み方で気になることがあるときは、学校の先生など、直接見ている方にご相談ください。
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