学校から配られたタブレットに、英語の教科書が入っていました。
子どもは家でもそれを開いて、音声を再生していました。
紙の教科書はランドセルに入ったままで、どちらが本物なのかが私には分かりませんでした。
そこで、文部科学省の「学習者用デジタル教科書について」のページと、その根拠になっている学校教育法の条文を開いて読み直しました。
この記事に書いてあるのは、その2つに書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
デジタル教科書は、紙の教科書に代えて使える教材として法律に書かれている
先に結論から書きます。
法律の上では、主たる教材は今も紙の教科書のほうです。
学校教育法の第三十四条第一項には、こう書かれています。
「小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」という条文です。
「使用しなければならない」という書き方なので、これは義務です。
そのうえで、第二項が置かれています。
第二項は「教科用図書に代えて当該教材を使用することができる」と書いていますが、その範囲を「教育課程の一部において」と限っています。
つまり、授業の全部を置き換えてよいとは書かれていません。
デジタル教科書が制度になったのは平成31年4月
文部科学省のページには、制度化の時期がそのまま書かれています。
「学習者用デジタル教科書を制度化する『学校教育法等の一部を改正する法律』等関係法令が平成31年4月から施行されました」と書かれています。
その結果どうなったのかも、同じ文の続きに書かれていました。
「これまでの紙の教科書を主たる教材として使用しながら、必要に応じて学習者用デジタル教科書を併用することができることとなりました」という書き方です。
ここで使われている言葉は「置き換え」ではなく「併用」です。
タブレットが配られたからといって、紙が無くなる制度にはなっていません。
デジタル教科書の定義は「紙の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録」
何をデジタル教科書と呼ぶのかも、ページに注記として書かれています。
「紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材」と書かれています。
ポイントは「そのまま」という言葉です。
中身が紙と同じものだけが、制度上のデジタル教科書だ、と読めます。
音声や動画、書き込み機能のような紙には無いものは、この定義の外にあります。
ページの中でも「デジタル教科書」と「教材」「学習支援ソフト」は別の言葉として使い分けられていました。
デジタル教科書は2024年度から全国の小中学校へ段階的に導入
いつから全国に入ったのかも、数字で書かれています。
「当面の間は、紙の教科書との併用を前提とした上で、2024年度から全国全ての小中学校等を対象に学習者用デジタル教科書を段階的に導入しています」と書かれています。
ここでも「併用を前提とした上で」という条件が先に置かれています。
そして「段階的に」という言葉が使われています。
全国全ての小中学校が対象だと書いてありますが、どの教科がどの順番で入るのかは、このページには書かれていませんでした。
デジタル教科書のページに「英語」という言葉は1件も出てこない
私がいちばん知りたかったのは、英語のデジタル教科書の話でした。
そこで、このページのHTMLを取得し、タグを外した本文を機械で数えました。
| 数えた言葉 | 件数 |
|---|---|
| 英語 | 0件 |
| 外国語 | 0件 |
| 国語 | 0件 |
| 算数 | 0件 |
| 理科 | 0件 |
| 社会 | 0件 |
教科の名前は、1つも出てきませんでした。
「教科別」という言葉だけが1件ありましたが、これは事例集の説明です。
「実証校の先生方から寄せられた様々な“お悩み”を教科別に取りまとめ」という文の中にありました。
つまり、このページは制度の説明であって、英語という教科について何かを決めているページではありません。
英語で何が使われているかを知りたいときは、学校に聞くほうが早い、ということになります。
デジタル教科書を授業の全部で使える場合が1つだけある
学校教育法第三十四条には、第三項という例外が置かれています。
「視覚障害、発達障害その他の文部科学大臣の定める事由により教科用図書を使用して学習することが困難な児童」についての条文です。
その児童に対して、文字や図形の拡大、音声への変換などの方法で学習上の困難の程度を低減させる必要があると認められるときの話が書かれています。
この場合だけ「教育課程の全部又は一部において、教科用図書に代えて当該教材を使用することができる」と書かれています。
第二項の「一部において」と、第三項の「全部又は一部において」は、同じ条の中で書き分けられています。
英語の音声を聞き取ることに困難がある場合が、この条文に当たるかどうかは、条文からは判断できませんでした。
デジタル教科書以外の教材について法律が書いていること
同じ第三十四条の第四項に、もう1行あります。
「教科用図書及び第二項に規定する教材以外の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる」と書かれています。
学校が使っている英語のアプリやドリルは、この第四項のほうに入る教材です。
「有益適切なもの」という条件だけが書かれていて、何が有益適切かは条文に定義されていません。
検定を受けているのは第一項の教科用図書だけです。
この違いは、家で「これは教科書ですか、教材ですか」と聞くときの手がかりになります。
デジタル教科書の今後は令和7年9月の審議まとめに書かれている
ページの後半に、新しい動きが1行載っていました。
「令和7年9月に『デジタル教科書推進ワーキンググループ 審議まとめ ~学びの可能性を広げる教科書を~』が公表されました」と書かれています。
中央教育審議会の下に設置されたワーキンググループでの検討結果です。
文部科学省は、この審議まとめについての解説ページも別に作ったと書いています。
「【よくある質問】デジタルな形態も含む新たな教科書について」という名前のページです。
制度が変わる可能性がある、という位置づけの資料が出ている段階です。
デジタル教科書のページには、親でも読める資料が並んでいる
このページは制度の説明だけで終わっていませんでした。
文部科学省は「実践事例集やガイドブック、研修動画等を策定・公表していますので、併せて御活用ください」と書いています。
並んでいる資料のうち、親が読んでも意味が分かりそうなものを書き出します。
- 令和6年度「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」事例動画
- 同事業の授業改善事例集(PDF)
- 同事業のリーフレット「こんなに使える!デジタル教科書・教材・学習支援ソフト」
- 学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン(令和3年3月改訂)
事例動画については「教職員のみなさま、各種関係者のみなさま、保護者のみなさまもどうぞご覧ください」と、保護者が名指しで書かれています。
リーフレットのほうは「子供が主体的に学びを進める7つのアイディアを紹介しています」と説明されています。
学校の使い方に疑問を持ったとき、先に国の資料を読んでから聞ける、という形にはなっています。
ただし、どの資料にも英語という教科名は、このページの紹介文の中には出てきませんでした。
デジタル教科書について、この記事で分からなかったこと
読んでも分からなかったことが3つあります。
- わが子の学校の英語でデジタル教科書が入っているか(教科名がページに1つも書かれていません)
- 「段階的に」がどういう順番なのか(このページには順番が書かれていません)
- 家庭が費用を負担するのかどうか(このページに「費用」「負担」という言葉は0件でした)
この3つは今回開いたページに書かれていなかったので、分からないと書いておきます。
ページの問い合わせ先は「初等中等教育局教科書課」と記載されています。
デジタル教科書について、今日わが家で確かめられること
ここまでで分かったことを、聞き方に置き換えます。
- 「タブレットに入っている英語のものは、デジタル教科書ですか、それとも教材ですか」=法律は第三十四条の第二項と第四項で別のものとして書いている
- 「紙の教科書はどの場面で使いますか」=制度は「紙の教科書を主たる教材として」と書いている
- 「家に持ち帰って使ってよいですか」=これは学校ごとの運用で、法律の条文には書かれていない
どれも、条文とページに出てくる言葉をそのまま使って聞ける形にしました。
条文と本文は、2026年9月17日に取得したものです。
制度は改正されることがあるので、最新の内容は文部科学省とe-Govの本文でご確認ください。
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