体験レッスンの帰り道、子どもが「たのしかった」と言いました。
先生は明るくて、教室はきれいで、同じ年ごろの子が何人も笑っていました。
それなのに、家に帰って渡された紙の束を広げたら、急に手が止まりました。
入会金、月謝、教材費、そして「所定の手続きにより」とだけ書かれた解約の欄。
雰囲気はよかったのに、紙のほうは何も分からない。
私は、この違和感を「気にしすぎ」で片づけたくなかったので、消費者庁の資料と法令の条文を開いて読み直しました。
この記事に書いてあるのは、そこに書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
子供の英語教室の選び方は、体験レッスンの空気より先に「書面」で決まる
先に結論を書きます。
子どもの英語教室を選ぶとき、いちばん比べやすいのは「先生の感じ」でも「教室の明るさ」でもありません。
事業者が法律で渡すことを義務づけられている2枚の書面です。
ひとつは契約する前に渡される概要書面。
もうひとつは契約したあとに遅滞なく渡される契約書面です。
この2枚には、何を書かなければいけないかが法律で決まっています。
つまり、教室が違っても、書いてある項目の並びはそろうということです。
そろっているものは、比べられます。
感覚で選ぶと比べられませんが、書面で選ぶと比べられる。
それが、私がたどり着いた選び方の骨組みです。
以下、その2枚に何が書かれることになっているのかを、消費者庁の案内と条文から順番に並べます。
子供の英語教室は、法律で「特定継続的役務提供」に入ることがある
まず、この話が自分の契約に当てはまるのかどうかを確かめます。
消費者庁の特定商取引法ガイド(特定継続的役務提供)によると、特定商取引法が特別に見張っているサービスは、いま7つに指定されています。
そのうちのひとつが「語学教室」です。
ただし、語学教室ならいつでも対象になるわけではありません。
期間と金額の2つの線を、両方とも超えたときだけです。
| 指定されている役務 | 期間の線 | 金額の線 |
|---|---|---|
| エステティック | 1月を超えるもの | いずれも5万円を超えるもの |
| 美容医療 | 1月を超えるもの | |
| 語学教室 | 2月を超えるもの | |
| 家庭教師 | 2月を超えるもの | |
| 学習塾 | 2月を超えるもの | |
| パソコン教室 | 2月を超えるもの | |
| 結婚相手紹介サービス | 2月を超えるもの |
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(指定役務の表)
語学教室の線は「2か月を超える期間」と「5万円を超える金額」です。
ここで大事なのは、金額の数え方でした。
同じ案内のなかに、金額は入学金・受講料・教材費・関連商品の販売などを合わせた契約金の総額で見る、と書かれています。
月謝だけを見て「うちは月8,000円だから関係ない」と思っていた私は、ここで読み違えていたことに気づきました。
1年分の契約なら月8,000円でも総額は9万6,000円で、5万円の線はとっくに超えています。
入会金や教材一式が加われば、半年の契約でも超えることは珍しくありません。
なお、この金額はいずれも例として並べた計算で、実際の税込・税抜の扱いは各教室の書面に書かれているとおりになります。
もうひとつ、店頭で契約した場合も対象になる、とはっきり書かれていました。
訪問販売ではないから関係ない、という話ではないということです。
子供の英語教室の選び方は、契約前にもらう「概要書面」でほぼ決まる
特定継続的役務提供に当たる契約では、事業者は契約を結ぶ前に概要書面を渡さなければならないことになっています(法第42条)。
「契約したらあとで全部説明します」では、順番が逆だということです。
そして、その概要書面に何を書くかまで決められています。
| 概要書面に書くと定められている事項 | 親が見るところ |
|---|---|
| 事業者の氏名(名称)・住所・電話番号、法人は代表者の氏名 | 教室名だけでなく運営会社まで書いてあるか |
| 役務の内容 | 「英会話」ではなく回数・時間・形式まで書いてあるか |
| 購入が必要な商品がある場合の商品名・種類・数量 | 教材が任意なのか必須なのか |
| 役務の対価その他の支払わなければならない金銭の概算額 | 月謝以外に何を払うのか |
| 上記の金銭の支払時期・方法 | 前払いか月払いか |
| 役務の提供期間 | 何か月の契約なのか |
| クーリング・オフに関する事項 | 起算日の書き方 |
| 中途解約に関する事項 | やめるときいくら残るか |
| 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項 | 分割払いを使うとき |
| 前受金の保全に関する事項 | 先にまとめて払うとき |
| 特約があるときは、その内容 | ここに独自ルールが集まる |
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(書面の交付・法第42条)
この11行を、そのままチェックリストにできます。
体験レッスンのあとに「概要書面をください」と言って、渡されたものをこの表と突き合わせる。
それだけで、教室ごとの差がかなりはっきり出ました。
とくに私が見るようになったのは、下から3行目の特約です。
休会の条件、振替の回数、教材の返品可否といった「その教室だけのルール」は、だいたいここに集まっていました。
子供の英語教室の契約書面は、概要書面と同じ重さで見る
契約したあとには、遅滞なく契約書面が渡されます。
概要書面と似ていますが、こちらのほうが項目は多く、「概算額」ではなく実際の額で書かれるところが違います。
| 契約書面に書くと定められている事項 |
|---|
| 役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合はその商品名 |
| 役務の対価その他の支払わなければならない金銭の額 |
| 上記の金銭の支払時期・方法 |
| 役務の提供期間 |
| クーリング・オフに関する事項 |
| 中途解約に関する事項 |
| 事業者の氏名(名称)・住所・電話番号、法人は代表者の氏名 |
| 契約の締結を担当した者の氏名 |
| 契約の締結の年月日 |
| 購入が必要な商品がある場合は、その種類・数量 |
| 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項 |
| 前受金の保全措置の有無、その内容 |
| 購入が必要な商品がある場合は、その商品を販売する業者の氏名(名称)・住所・電話番号、法人は代表者の氏名 |
| 特約があるときは、その内容 |
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(契約書面の記載事項)
ここには、書面の見た目まで決められている、という一文もありました。
書面をよく読むべきことは赤枠の中に赤字で書かなければならない。
契約書面のクーリング・オフの事項も、赤枠の中に赤字で書かなければならない。
字と数字の大きさは8ポイント以上(官報の字の大きさ)でなければならない。
つまり、渡された紙を広げて赤い枠が見当たらないなら、それ自体が確認すべきサインになります。
私はこれを知るまで、契約書の赤い囲みを「デザイン」だと思っていました。
デザインではなく、義務でした。
子供の英語教室でクーリング・オフを使えるのは「書面を受け取った日から8日」
クーリング・オフは、多くの親が名前だけは知っている制度だと思います。
私も知っているつもりでしたが、起算日を間違えて覚えていました。
数え始めるのは「契約した日」ではなく「法律で決められた書面を受け取った日」です。
- 期間=書面を受け取った日から数えて8日以内(法第48条)
- 方法=書面または電磁的記録で事業者に伝える
- 対象=本体の契約だけでなく、関連商品の販売契約も含む
- 効果=損害賠償や違約金を払う必要はなく、すでに払った頭金などは速やかに返してもらえる
- 効果=すでにレッスンが提供されていても、その対価を払う必要はない
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(クーリング・オフ制度・法第48条)
もうひとつ、8日を過ぎても使える場合が書かれていました。
事業者が事実と違うことを告げたり、威迫したりして、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフをしなかったとき。
この場合は、8日を過ぎていてもクーリング・オフができる、とされています。
伝え方についても、案内には具体的な書き方がありました。
書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便など、記録が残る形で出すことがすすめられています。
電子メールなら送信したメールを保存する、専用フォームならスクリーンショットを残す、という書き方もそのまま載っていました。
⛔ ただし、使うと商品価値がほとんどなくなる消耗品を使ってしまった場合は、クーリング・オフの規定が適用されないとも書かれています。
英語教室で例に挙げられている関連商品は消耗品ではありませんが、例外があること自体は覚えておく価値がありました。
子供の英語教室の選び方は「途中でやめるときいくら残るか」まで見る
ここが、私がいちばん知りたかったところでした。
子どもが飽きるかどうかは、契約するときには誰にも分かりません。
だから「合わなかったときの出口」を先に見ておきたい、と思っていました。
特定継続的役務提供では、クーリング・オフの期間が過ぎたあとでも、将来に向かって契約を解除(中途解約)できるとされています(法第49条)。
しかも、事業者が請求できる額には上限が決められていました。
| 解除のタイミング | 語学教室で請求できる上限 |
|---|---|
| レッスンの提供が始まる前 | 1万5000円 |
| レッスンの提供が始まった後 | すでに提供された役務の対価に相当する額+「5万円」または「契約残額の20%に相当する額」のいずれか低い額 |
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(中途解約・法第49条)/e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律施行令(昭和五十一年政令第二百九十五号)
「契約残額」とは、役務の対価の総額から、すでに提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額だと定義されています。
ここに出てくる1万5000円・5万円・20%は、法令が定めた上限の額です。
2026年9月12日にe-Gov法令検索の法令データで施行令の全文を取り、機械で語を数えたところ、「税込」「税抜」「税別」「消費税」はいずれも0件でした。
つまり、この上限額の条文じたいには税込・税抜の区別が書かれていない、ということです。
教室ごとの月謝や入会金が税込表示か税抜表示かは、渡された書面の表記に従ってください。
参考までに、ほかの役務の上限額も並べておきます。
| 役務 | 提供開始前の上限 | 提供開始後の上限(提供済みの対価に加算される額) |
|---|---|---|
| 語学教室 | 1万5000円 | 5万円または契約残額の20%のいずれか低い額 |
| 学習塾 | 1万1000円 | 2万円または1か月分の授業料相当額のいずれか低い額 |
| 家庭教師 | 2万円 | 5万円または1か月分の授業料相当額のいずれか低い額 |
| パソコン教室 | 1万5000円 | 5万円または契約残額の20%のいずれか低い額 |
語学教室と学習塾では、上限の決まり方そのものが違います。
だから「うちの子が通うのは、語学教室なのか学習塾なのか」を先に確かめる意味があります。
それ以上の額をすでに受け取っている場合には、残額を返さなければならない、という一文も添えられていました。
子供の英語教室の教材やタブレットは「関連商品」として一緒に解約できる
英語教室の契約でいちばん金額が動くのは、実は月謝ではなく教材一式だったりします。
「レッスンはやめられたけれど、教材のローンだけ残った」という形が、私がいちばん怖いと思っていたものでした。
ここについても、条文の側に答えがありました。
本体の契約をクーリング・オフまたは中途解約した場合は、関連商品についても同じようにクーリング・オフ(または中途解約)できると書かれています。
そして、語学教室・家庭教師・学習塾の関連商品として指定されているものは、次の3つでした。
- 書籍(教材を含む)
- カセット・テープ、CD、CD-ROM、DVDなど
- ファクシミリ機器、テレビ電話
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(関連商品の指定)
この一覧を読んだとき、正直「タブレットは入っていないな」と思いました。
指定されているのは書籍と音声・映像のメディア、そしてファクシミリ機器とテレビ電話です。
パソコン教室のほうには「電子計算機及びワードプロセッサー並びにこれらの部品及び附属品」が入っていますが、語学教室の側には入っていません。
書いていないことは、書いていないまま書きます。
だから、端末を買い取る形の契約をすすめられたら、その端末が解約のときどう扱われるのかを、契約前に書面で聞いておく価値があります。
聞いた答えは、口ではなく紙に書いてもらう。
概要書面の「特約があるときは、その内容」は、まさにそのための欄です。
前払いの子供の英語教室には「財務の書類を見せてください」と言える
これは、読むまでまったく知りませんでした。
前払方式で5万円を超える特定継続的役務提供を行う事業者には、業務と財産の状況を記載した書類を用意しておく義務があります(法第45条)。
例として挙げられているのは、貸借対照表と損益計算書です。
そして、消費者の求めに応じて閲覧できるようにしておくこと、まで義務づけられています。
前払いで1年分をまとめて払う契約は、子どもの習い事ではよくある形です。
払ったあとに教室が閉じてしまったら、レッスンも戻らずお金も戻りません。
その不安に対して、法律は「見せてもらっていい」という道を用意していました。
見せてもらったところで財務諸表を読み解けるか、というのは別の話です。
それでも、頼んだときの反応そのものが情報になります。
すぐ出てくるのか、用意していないのか。
あわせて、概要書面の「前受金の保全に関する事項」と、契約書面の「前受金の保全措置の有無、その内容」も見ておきます。
前払いを求められる契約ほど、この3か所が効いてきます。
子供の英語教室でも、この法律が届かない契約がある
ここまで書いてきたルールは、全部の英語教室に当てはまるわけではありません。
当てはまらない場合を先に知っておくほうが、選び方としては安全だと思いました。
ひとつ目は、期間と金額の線に届かない契約です。
2か月以内で終わる短期コースや、総額が5万円以下の契約は、語学教室としての対象から外れます。
短期の夏期講習だけを申し込むような形は、ここに入ることがあります。
対象から外れるということは、8日のクーリング・オフも、中途解約の上限額も、この法律からは出てこないということです。
ふたつ目は、そもそも「語学教室」の定義から外れる場合です。
条文では語学教室を「語学の教授」としたうえで、入学試験に備えるための学力の教授と、大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授を除く、と書いています。
つまり、受験対策の英語や学校の補習としての英語は、語学教室ではなく学習塾や家庭教師のほうで見ることになります。
前の章で見たとおり、その2つは中途解約の上限額の決め方が語学教室と違います。
さらに、家庭教師と学習塾については、幼稚園や小学校に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれない、とも書かれていました。
3つ目は、適用除外です(法第50条)。
- 営業のため、又は営業として締結するもの
- 海外にいる人に対する販売又は役務の提供
- 国、地方公共団体が行う販売又は役務の提供
- 特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合が組合員に対して行うもの
- 事業者がその従業員に対して行った販売又は役務の提供
自治体がやっている子ども向け英語講座が、民間の教室と同じルールで動いているとは限らない、ということです。
法律の対象かどうかで、出口の広さが変わる。
私は、この1点を確かめてから金額を比べるようになりました。
子供の英語教室の勧誘で、この3つをされたら立ち止まっていい
選び方の話は、最後に勧誘の場面へ戻ります。
特定商取引法は、特定継続的役務提供における禁止行為を3つ挙げています(法第44条)。
- 契約の締結について勧誘を行う際、又は契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げること
- 契約の締結について勧誘を行う際、故意に事実を告げないこと
- 契約を締結させ、又は契約の解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
出典=消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(禁止行為・法第44条)
2つ目の「故意に事実を告げないこと」が、私には効きました。
言われなかったことも、規制の対象になり得るということだからです。
広告についても、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利だと誤認させる表示は禁じられています(法第43条)。
そして、事実と違うことを告げられて誤認した場合や、故意に事実を告げられずその事実がないと誤認した場合には、申込みや承諾の意思表示を取り消すことができるとされています(法第49条の2)。
クーリング・オフの8日とは別に、取消しという道も用意されているということです。
行政規制に違反した事業者は、業務改善の指示や業務停止命令などの対象になる、とも書かれています。
ここまで読んで、私は「その場で決めなくていい理由」を1つ手に入れた気がしました。
今日中に決めれば入会金が無料、と言われたときに、持ち帰る根拠ができたということです。
子供の英語教室の選び方 ── 今日、家で決められる3つのこと
最後に、体験レッスンに行く前でもできることを3つだけ書きます。
1つ目=「概要書面をください」と言う文を、スマホのメモに書いておく。
その場で言葉が出てこないことのほうが多いので、読み上げられる形にしておきます。
契約の前に渡すことになっている書面なので、頼むこと自体は失礼ではありません。
2つ目=契約の「期間」と「総額」を、その場で数字にする。
2か月を超えるか、入会金と教材費を足した総額が5万円を超えるか。
この2つが両方とも「超える」なら、ここまで書いたルールが働く契約だということになります。
超えないなら、出口は教室ごとの規約しだいなので、そちらをもっと丁寧に読みます。
3つ目=「途中でやめたらいくらですか」を、必ず声に出して聞く。
提供が始まる前と、始まったあと。
この2つに分けて聞いて、返ってきた答えを書面の中の「中途解約に関する事項」と照らします。
法律の上限を超える請求の説明が返ってきたら、そこで決めずに持ち帰ります。
子どもに合うかどうかは、通ってみないと分かりません。
合わなかったときに、家計と親の気持ちがどれだけ削られるかは、契約する前に分かります。
私は、そこだけは感覚で決めないことにしました。
迷ったときの相談先として、消費者ホットライン「188」や、お住まいの自治体の消費生活センターが案内されています。
出典
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」(指定役務・書面の交付・クーリング・オフ・中途解約・関連商品・禁止行為・適用除外)
- 消費者庁「特定商取引法」(法律・政令・省令・通達・ガイドラインの一覧)
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律施行令(昭和五十一年政令第二百九十五号)(中途解約の上限額を定める政令。2026年9月12日に法令データの全文を取得して確認)
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)
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