プリンタのインクが切れた日に、子どもの英語のプリントを何枚刷ったのか数えてみました。
無料でダウンロードできるアルファベットの練習用紙、単語のなぞり書き、イラスト付きの絵カード。
どれも「小学生向け」と書いてありましたが、うちの子の学年でやるべきものなのかは、どこにも書いてありませんでした。
無料なので気軽に刷れるぶん、学年に合っていないプリントを大量に持たせてしまいがちです。
もう1つ引っかかったのが、印刷したプリントを友だちの分まで刷ってあげていいのか、というところでした。
保護者会で配ろうか、という話が出たとき、それは大丈夫なのかが自分では答えられませんでした。
なので、自分の感覚で決めるのをやめて、学習指導要領の告示と著作権法の条文を開いて、書いてあることだけを書き出しました。
この記事に書いてあるのは、2026年9月16日に文部科学省の告示とe-Gov法令検索の条文を開いて、そこに書いてあったことと、書いていなかったことだけです。
個別のプリント配布サイトの評価や順位は載せていません。法令は改正されるので、最新の条文は出典の公式ページでご確認ください。
小学生の英語プリントを無料で使うとき、先に決めるのは「学年の何に当てるか」だった
先に結論を書きます。
無料の英語プリントで迷う原因は枚数でも質でもなく、「小学校で英語に何を求めているか」を知らないまま選んでいることでした。
学習指導要領には、学年ごとに扱う領域、年間の時間数、扱う語の数が、全部数字で書かれています。
そして、印刷したものをどこまで使ってよいかは、著作権法の第三十条と第三十五条で線が引かれています。
この2つを知ると、選ぶ候補が一気に減ります。
今回開いた資料から引けた数字を、先に1枚にまとめます。
| 決めごと | 書かれていたこと | 出典 |
|---|---|---|
| 小3・小4の時間 | 年35単位時間(1単位時間45分) | 学習指導要領 別表第一 |
| 小5・小6の時間 | 年70単位時間(1単位時間45分) | 学習指導要領 別表第一 |
| 小3・小4の領域 | 聞くこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]の三つ | 学習指導要領 第4章 |
| 小5・小6の領域 | 上の三つに読むこと・書くことを加えた五つ | 学習指導要領 第2章第10節 |
| 扱う語 | 600〜700語程度 | 学習指導要領 第2章第10節 |
| 家で印刷して使う | 私的使用として複製できる | 著作権法 第三十条 |
| 学校が複製する | 営利目的でない教育機関は授業の過程で複製できる | 著作権法 第三十五条 |
この表に無いもの、たとえば「1日何枚刷るべきか」という数字は、今回の調査では公的資料の中に見つかりませんでした。
小学生が学校で英語に使う時間は35時間と70時間と決まっている
家でプリントをどれだけやらせるかを考えるには、学校で何時間やっているかが起点になります。
小学校学習指導要領(平成29年告示)の別表第一に、授業時数の表があります。
第3学年と第4学年の外国語活動が年35単位時間、第5学年と第6学年の外国語が年70単位時間で、同じ表に「この表の授業時数の一単位時間は、四十五分とする」と注記されています。
45分換算にすると、こうなります。
| 学年 | 教科等 | 年間の単位時間 | 45分換算 |
|---|---|---|---|
| 小1・小2 | 英語の授業時数の定めなし | - | - |
| 小3・小4 | 外国語活動 | 35 | 1,575分(約26時間15分) |
| 小5・小6 | 外国語 | 70 | 3,150分(約52時間30分) |
小3・小4は年間で約26時間、小5・小6でも約52時間です。1年でこれだけ、という量です。
ここで、家庭のプリントの量を考え直すことになりました。
1日1枚を5分で解いて毎日続けると、年間で約1,825分です。
小3・小4が学校で受ける外国語活動の年間時間(1,575分)を超える計算になり、1日1枚でも「学校より多い」ところまで来ます。
無料だからといって枚数を増やす方向に走ると、学校の倍以上をやらせることになります。
そこまでやる必要があるかは、家庭ごとの判断です。
小学生の小3・小4は三つの領域。書くプリントは学習指導要領に入っていない
枚数より先に決めるべきなのが、どの種類のプリントかです。
学習指導要領は、扱う「領域」を学年で分けています。
第4章の外国語活動は「聞くこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]の三つの領域」と明記されていて、読むことと書くことは入っていません。
外国語活動の目標も「外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して」と書かれています。
聞く・話すが中心で、文字を書く活動は小3・小4の柱ではない、ということです。
つまり、小3の子にアルファベットのなぞり書きプリントを毎日やらせるのは、学校の並びとはずれた先取りになります。
先取りが悪いという話ではありません。
ただ、学校で習っていないものを家で先にやらせて、できないと叱ってしまうと、いちばん避けたい形になります。
- 小3・小4で学習指導要領に沿うのは、聞く活動と話す活動
- 文字のプリントは小3・小4の柱ではない
- 先取りするなら、学習指導要領の範囲外だと分かったうえでやる
小学生の小5・小6で五つの領域になる。読む・書くのプリントはここから
小5・小6になると、扱う領域が増えます。
第2章第10節の外国語は「聞くこと、読むこと、話すこと[やり取り]、話すこと[発表]、書くことの五つの領域」と明記されています。
小3・小4の三つに、読むことと書くことが加わった形です。
| 学年 | 領域の数 | 中身 |
|---|---|---|
| 小3・小4 | 三つ | 聞くこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表] |
| 小5・小6 | 五つ | 聞くこと/読むこと/話すこと[やり取り]/話すこと[発表]/書くこと |
書き取りの無料プリントが本当に効くのは、小5・小6に入ってからだ、ということになります。
文字についての記述もあります。
同じ節には、終止符や疑問符、コンマなどの基本的な符号を扱うことが書かれています。
符号の使い方を扱う無料プリントは、小5・小6の内容としては学習指導要領の中に根拠があります。
プリントを選ぶときは、まず子どもの学年を確認して、その学年の領域に入っているかを見る。
この順番にすると、迷う時間が短くなります。
小学生が小学校で扱う語は600〜700語程度と書かれている
量の目安として、もう1つ数字があります。
外国語の「語、連語及び慣用表現」の項に、扱う語数が書かれています。
第3学年と第4学年で外国語活動を履修する際に取り扱った語を含めて、600〜700語程度の語、というのが小学校の範囲です。
同じ項には、連語として get up、look at などが、慣用表現として excuse me、I see、I’m sorry、thank you、you’re welcome などが例示されています。
ここで混ざりやすい数字があるので、注意が必要です。
同じPDFを通しで読むと「1600〜1800語程度の新語を加えた語」という記述も出てきますが、これは中学校の章のもので、小学校の数字ではありません。
| 校種 | 扱う語の数 |
|---|---|
| 小学校(外国語活動で扱った語を含む) | 600〜700語程度 |
| 中学校(小学校で学習した語に加えて) | 1600〜1800語程度 |
単語プリントを選ぶとき、600〜700語を大きく超える語彙集を小学生に当てているなら、それは中学校の範囲に入っています。
中学校の範囲を小学生にやらせてはいけない、という決まりはありません。
ただ、それが小学校の基準を超えていることは、親が知っていたほうがいい情報です。
小学生の英語プリントを家で印刷するのは、著作権法第三十条の私的使用に当たる
ここから、印刷したあとの話です。
無料で配布されているプリントも、作った人の著作物です。
著作権法第三十条は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる」と定めています。
自分の子どものために家で印刷して使うのは、この「家庭内」に収まります。
ただし、条文には「次に掲げる場合を除き」という条件がついていて、4つの除外が列挙されています。
| 号 | 除外される場合 |
|---|---|
| 第一号 | 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合 |
| 第二号 | 技術的保護手段の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行う場合 |
| 第三号 | 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音・録画を、それと知りながら行う場合 |
| 第四号 | 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製を、それと知りながら行う場合 |
無料プリントで引っかかる可能性があるのは第一号と第四号です。第一号はコピー機の話、第四号は違法に配信されているものをダウンロードする話です。
第四号の「それと知りながら」は重要で、知らずにやった場合は含まれません。
条文の第2項には「重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」とまで書かれています。
小学生のプリントをコンビニのコピー機で刷ってよいのかは、附則に答えが書いてある
第一号の「自動複製機器」を素直に読むと、コンビニのコピー機は当てはまりそうに見えます。
しかし、著作権法の附則に経過措置があります。
附則の(自動複製機器についての経過措置)には「当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする」と書かれています。
専ら文書または図画の複製に使うもの、つまり紙のコピー機は、当分の間この号から外されている、という意味です。
家にプリンタがなくてコンビニで印刷する場合も、私的使用の範囲であれば第一号にはあたらない、と条文からは読めます。
ここは条文の読み方の話なので、断定はしません。条文にそう書いてあった、というところまでです。
なお、この附則は「当分の間」という書き方なので、将来変わる可能性があります。
印刷の手段より、そもそも配布元の利用規約に「印刷可」と書いてあるかを見るほうが、実際には早く片がつきます。
小学生の英語プリントを家庭の外に配ると、第三十条の範囲から外れる
いちばん引っかかっていたのが、ここでした。
保護者会で配る、友だちの分まで刷る、学童に持っていって配る。
第三十条が認めているのは「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」なので、家庭の外へ配る行為は、この範囲の外に出ます。
「これに準ずる限られた範囲内」がどこまでかは条文に数字で書かれていません。
数字が書いていない以上、「何人までなら大丈夫」と言い切ることはできません。分からないものは分からないままにします。
現実的な手は1つです。
配りたいときはプリントそのものを配るのではなく、配布元のURLを伝えて、各家庭でダウンロードしてもらう形にする。これなら複製していません。
無料で配布されているものなら、URLを渡すのに追加の負担もありません。
配布元にとっても、アクセスが増えるほうが望ましいはずです。
- 自分の子のために家で印刷する=第三十条の範囲内
- 友だちの分まで刷って配る=範囲の外
- URLを伝えて各家庭で印刷してもらう=複製していないので問題にならない
小学生が通う学校がプリントを複製できるのは、著作権法第三十五条があるから
学校でプリントが配られるのは、別の条文が支えています。
著作権法第三十五条は「学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し」できると定めています。
先生だけでなく「授業を受ける者」、つまり子どもの側も対象に入っているのが特徴です。
ただし、同じ条文にただし書きがあります。
「当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」と書かれています。
第2項には、公衆送信を行う場合に教育機関の設置者が補償金を支払う、という規定もあります。
| 場面 | 根拠になる条文 | 対象になるか |
|---|---|---|
| 自分の子のために家で印刷 | 第三十条(私的使用) | 範囲内 |
| 友だちの分まで刷って配る | 第三十条 | 家庭内を超えるので範囲外 |
| 学校の授業で先生が配る | 第三十五条第1項 | 営利目的でない学校なら対象 |
| 学校が授業をオンラインで送信 | 第三十五条第2項 | 対象だが設置者が補償金を支払う |
家庭は学校ではないので、第三十五条は使えません。家でできることの根拠は、あくまで第三十条だけです。
小学生が通う学習塾は、著作権法第三十五条の対象から外れている
もう1つ、条文をよく読むと分かることがあります。
第三十五条の対象は「学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)」なので、営利を目的として設置されている塾や英会話教室は、この条文の対象から外れます。
つまり、学校で配られるプリントと、塾で配られるプリントは、根拠になる条文が違います。
塾が無料プリントを刷って配っているとしたら、それは第三十五条ではなく、配布元から別の許諾を得ているか、自作しているかのどちらかです。
保護者の立場では、ここを確かめる必要はありません。
ただ、「学校で配れるんだから、うちで配ってもいいだろう」という理屈が成り立たないことは、知っておくと役に立ちます。
学校が配れるのは、学校が営利目的でない教育機関で、授業の過程だからです。家庭にはこの3つの条件が揃いません。
小学生の英語プリントを配っているサイトで、印刷する前に見る場所
ここまでの条文を踏まえて、無料プリントのサイトで実際に見るべきところを整理します。
見るのは4か所です。
1つ目は、利用規約または「ご利用について」のページで、印刷してよい範囲がどう書かれているかです。第三十条の私的使用より狭い条件を、配布元が設定していることがあります。
2つ目は、対象学年の表記です。
「小学生向け」だけで学年が書かれていないプリントは、三つの領域の学年に当てるのか五つの領域の学年に当てるのかが判断できません。
3つ目は、扱っている語が600〜700語の範囲の中にあるかどうかです。
中学校の範囲の語彙が混ざっていても構いませんが、混ざっていることを知っていたほうがいい、という話です。
4つ目は、配布元が誰かです。学校・自治体・出版社・個人のどれかで、規約の書き方も更新の頻度も変わります。
この4つを見れば、印刷する前に大半のミスマッチが防げます。
| 見る場所 | 確かめること |
|---|---|
| 利用規約・ご利用について | 印刷と配布の範囲がどう書かれているか |
| 対象学年 | 小3・小4か、小5・小6か |
| 扱う語 | 600〜700語の範囲内か、中学校の範囲が混ざっているか |
| 配布元 | 学校・自治体・出版社・個人のどれか |
逆に、ダウンロード数やランキングは、この4つのどれにも答えてくれません。
小学生の英語プリントについて、今日、家で決められること
最後に、今日のうちに手を動かせることを3つに絞ります。
1つ目は、子どもの学年を学習指導要領の表に当てて、いま刷っているプリントが三つの領域の側か五つの領域の側かを確かめることです。小3・小4なら聞く・話す、小5・小6ならそこに読む・書くが加わります。
プリントの束を全部見直す必要はありません。今日刷ろうとしている1枚だけで十分です。
2つ目は、枚数の上限を先に決めることです。1日1枚を毎日続けるだけで、小3・小4が学校で受ける年間の時間を超えます。
上限を決めておかないと、無料であるぶん、増える方向にしか動きません。
3つ目は、友だちに渡したくなったらプリントではなくURLを渡す、と家のルールにしておくことです。複製しなければ、第三十条の範囲を気にする必要がなくなります。
この3つは、どのサイトを使うかとは関係なく決められることです。
プリントを探す時間より、この枠を作る時間のほうが、あとで効いてきます。
それでも迷ったら、学校で配られたプリントを子どもに見せてもらうのがいちばん早いです。その学年で扱っている領域が、そこにそのまま出ています。
法令も告示も改正されます。条文を使うときは、下の出典で最新の本文をご確認ください。
小学生の英語プリントを調べるときに使った出典
今回開いた資料は次のとおりです。
いずれも2026年9月16日に閲覧しました。
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